2021年8月

ポジティブ・インパクト評価(要約)

川崎重工は、航空宇宙システム、エネルギーソリューション&マリン、精密機械・ロボット、モーターサイクル&エンジン、車両事業を展開する総合重機大手である。同社は、2020年に「グループビジョン2030」(図表①)を策定し、「安全安心リモート社会」、「近未来モビリティー」、「エネルギー・環境ソリューション」を3つの注力するフィールドとしている。また2017年には、CO2FREE(CO2排出ゼロ)、Waste FREE(廃棄物ゼロ)、Harm FREE(有害化学物質ゼロ)の3つのFREEを柱とする「Kawasaki地球環境ビジョン2050」を策定しており、その実現に向けて3か年の「環境経営活動基本計画」を策定・実行している。そして、2021年に見直した「重要課題(マテリアリティ)」(図表②)では、「グループビジョン2030」における3つの注力するフィールドを「事業を通じて創出する社会価値」として、また「Kawasaki地球環境ビジョン2050」における3つの柱を「事業活動を支える基盤」の一要素として、それぞれ特定している。同社は、サステナビリティに係る各種施策の審議・決定、達成状況・遵守状況のモニタリングを行うため、「サステナビリティ委員会」や「地球環境会議」を定期的に開催し、各種取り組みを推進している(図表③)。

本ファイナンスでは、川崎重工の事業活動全体に対する包括的分析が行われた。上記のサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト特定のうえ「安全安心リモート社会の実現」、「近未来モビリティー社会の実現」、「エネルギー・環境ソリューションによる脱炭素社会の実現」、「Waste FREE」、「Harm FREE」の5項目のインパクトが選定された(図表④)。そして、各インパクトに対してインパクト指標(KPI)が設定された。

図表①:グループビジョン2030

図表②:マテリアリティ

図表③:サステナビリティ推進体制

図表④:ポジティブ・インパクト・ファインスで設定した目標と指標(KPI)

テーマ 主な内容 主なKPI(指標と目標) SDGs
安全安心リモート社会の実現 リモートによる実作業の環境の提供や新しい働き方・くらし方の提案を通じて、時間や場所の制約を受けず、全ての人々の社会参加を実現
  • (a)
    産業用ロボット
    目標
    国内の働き手不足の解消に貢献
    指標(KPI)
    リモートプラットフォームのアクティブユーザー数
  • (b)
    手術支援ロボット
    目標
    手術支援ロボットの売上高増加
    指標(KPI)
    手術支援ロボットの売上高
  • (c)
    PCR検査
    目標
    PCR検査体制の確立
    指標(KPI)
    PCR検査数
3 すべての人に健康と福祉を
8 働きがいも 経済成長も
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
17 パートナーシップで目標を達成しよう
近未来モビリティー社会の実現 先進的都市のあり姿である「スーパーシティ」の実現に貢献する新モビリティ・システム開発
  • (a)
    VTOL無人機
    目標
    VTOL無人機の売上高増加
    指標(KPI)
    VTOL無人機の売上高
  • (b)
    配送ロボット
    目標
    配送ロボットの売上高増加
    指標(KPI)
    配送ロボットの売上高
3 すべての人に健康と福祉を
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
11 住み続けられるまちづくりを
エネルギー・環境ソリューションによる脱炭素社会の実現 クリーンエネルギー「水素」の大量安定供給・利用拡大、低炭素社会の実現
  • (a)
    水素導入量
    目標
    2030年までにKHIソリューションによる水素導入量22.5万t/年
    指標(KPI)
    KHIソリューションによる水素導入量
  • (b)
    KHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減(理論値)
    目標
    2030年までにKHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減量160万t
    指標(KPI)
    KHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減量
  • (c)
    自社のCO2排出量削減
    目標
    2050年にグループ全体の事業活動におけるCO2排出量ゼロ(Scope1~2)
    指標(KPI)
    グループ全体の事業活動におけるCO2排出量(Scope1~2)
7 エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
13 気候変動に具体的な対策を
17 パートナーシップで目標を達成しよう
Waste FREE 廃棄物排出削減、循環型社会

目標
直接埋め立て廃棄物÷廃棄物総発生量を1%以下

指標(KPI)
直接埋め立て廃棄物÷廃棄物総発生量

12 つくる責任 つかう責任
Harm FREE 有害化学物質管理

目標
有害化学物質の削減

指標(KPI)
有害化学物質総発生量

12 つくる責任 つかう責任

上記KPIのモニタリング状況

開示資料

目標と指標(KPI) 2021年度実績 2022年12月付「ポジティブ・インパクト評価」再実施(※)に伴う見直し
1 安全安心リモート社会の実現
  • (a)

    産業用ロボット

    目標
    国内の働き手不足の解消に貢献

    KPI
    リモートプラットフォームのアクティブユーザー数

  • 0(商用化されていない実証段階)
  • ソニーグループ株式会社と新会社リモートロボティクス株式会社を設立し、リモートロボットプラットフォーム構築に向け活動。

目標を「2030年までに国内約400万人の製造業・サービス業等の働き手不足の5%解消」に変更し、2022年度以降モニタリングを実施してまいります。

  • (b)

    手術支援ロボット

    目標
    手術支援ロボットの売上高増加

    KPI
    手術支援ロボットの売上高

  • 累計台数18台、泌尿器科での症例数180症例以上
  • 消化器外科、婦人科への適用拡大を申請
  • 遠隔手術のプロジェクト3件に参画し、実証実験中

以下の内容に変更し、2022年度以降モニタリングを実施してまいります。

目標

2030年までに国内約200万人の医療・福祉関係者の不足の5%解消

指標(KPI)

手術支援ロボットによる手術件数

  • (c)

    PCR検査

    目標
    PCR検査体制の確立

    KPI
    PCR検査数

目標
  • PCR検査サービス事業の取扱検体数約40万
  • 大学との連携や空港・自治体向けサービスを展開
  • 2022年度以降はモニタリングは実施いたしません。
2 近未来モビリティー社会の実現
  • (a)

    VTOL無人機

    目標
    VTOL無人機の売上高増加

    KPI
    VTOL無人機の売上高

  • 福島ロボットテストフィールドにおける無人VTOLと配送ロボットの連携によるシームレス無人物資輸送の技術実証試験を実施。
  • 東京都内の公道での小型・低速の配送ロボットによる人を介さない物流システムの実現に向けた実証実験を実施。
  • 長野県伊那市の「無人VTOL機による物資輸送プラットフォーム構築事業」を受託。

以下の内容に変更し、2022年度以降モニタリングを実施してまいります。

目標

2030年までに物流における人手不足の20%解消

指標(KPI)
  • 無人VTOL機のユーザー数、総輸送量
  • 配送ロボットのユーザー数、総輸送量
  • (b)

    配送ロボット

    目標
    配送ロボットの売上高増加

    KPI
    配送ロボットの売上高

3 エネルギー・環境ソリューションによる脱炭素社会の実現
  • (a)

    水素導入量

    目標
    2030年までにKHIソリューションによる水素導入量22.5万t/年

    KPI
    KHIソリューションによる水素導入量

  • 世界初、褐炭から製造した水素を液化水素運搬船で海上輸送・荷役する実証実験を完遂。
  • エアバスと日本における水素の利活用に向け協働開始。水素の生産から空港への輸送、航空機への補給まで、さまざまな段階における水素サプライチェーンの構築を共同で調査する覚書を締結。
  • 2022年度以降もモニタリングを継続してまいります。
  • (b)

    KHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減(理論値)

    目標
    2030年までにKHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減量160万t

    KPI
    KHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減量

  • 2022年度以降もモニタリングを継続してまいります。
  • (c)

    自社のCO2排出量削減

    目標
    2050年にグループ全体の事業活動におけるCO2排出量ゼロ(Scope1~2)

    KPI
    グループ全体の事業活動におけるCO2排出量(Scope1~2)

402,026t

以下の内容に変更し、2022年度以降モニタリングを実施してまいります。

目標
  • 2030年:カーボンニュートラル(国内グループ会社、Scope1,2)
  • 2040年:CO2排出量80%削減(Scope3カテゴリー1、2021年比)
  • 2050年:カーボンニュ―トラル(グループ全体(連結)、Scope1~3)
指標(KPI)
  • CO2排出量(Scope1,2、グループ全体(連結)・国内グループ会社)
  • CO2排出量(Scope3カテゴリー1)
4 Waste FREE
  • 目標
    直接埋め立て廃棄物÷廃棄物総発生量を1%以下

    KPI
    直接埋め立て廃棄物÷廃棄物総発生量

0.2%
  • 2022年度以降もモニタリングを継続してまいります。
5 Harm FREE
  • 目標
    有害化学物質の削減

    KPI
    有害化学物質総発生量

  • ジクロロメタン:36t
  • 有害重金属:14t
  • 主要VOC原単位:57.0Kg/億円
  • 2022年度以降もモニタリングを継続してまいります。

(※)川崎重工業株式会社向け最新のポジティブ・インパクト評価については、以下をご確認ください。
https://www.smth.jp/sustainability/Initiatives_achievements/pif/portfolio40
ポジティブ・インパクト評価の再実施に伴い、本件PIFの2022年度以降のモニタリング実績は、上記ページに集約して開示してまいります。

プレスリリース

本事例の内容は、2021年8月末日現在の情報に基づき記載しております。

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