2022年7月

ポジティブ・インパクト評価(要約)

ミネベアミツミは、幅広い製品をグローバルで展開する総合精密部品メーカーである。2017年に電子部品大手のミツミ電機を完全子会社化し、「ミネベア」から「ミネベアミツミ」に商号変更した。超精密機械加工技術や大量生産技術をはじめとするコア技術を生かし、ニッチ分野を中心に多角化を図っている。

同社グループは、企業の使命とは法令の遵守だけではなく、企業倫理に則した公正かつ、適切な事業運営を通じて、地球環境及び人類の持続可能な発展に貢献することであると考えている。この使命を果たすため、「経営理念」及び社是として位置付けた「五つの心得」を基本とした「ミネベアミツミグループのCSR基本方針」、「ミネベアミツミグループのCSR実践に向けた活動方針」を策定し(図表①)、取り組みを進めている。また、同社は、脱炭素社会の実現やSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け、GX(グリーン・トランスフォーメーション)や多様性(ダイバーシティ)の推進に注力している。多くの第三者評価・外部認証等を取得しているほか、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同をしている。

同社グループは、「ミネベアミツミグループのCSR基本方針」及び「ミネベアミツミグループのCSR実践に向けた活動方針」を基にCSR活動を推進するため、最高責任者を社長執行役員、最高責任者補佐をCSR担当役員とするCSR推進体制を構築している(図表②)。2019年4月には、持続可能な社会の発展に貢献すること、また、監視業務と執行業務を分離し、ガバナンス体制を強化することを目的に、サステナビリティ推進部門を新設した。同部門では、CSR推進室、コンプライアンス推進室、内部監査室、内部統制推進室、グループ環境管理室、セキュリティ推進室、及び貿易法令遵守管理室、安全保障貿易管理室が集約されている。そして、同年5月にサステナビリティに関するマテリアリティを特定し、2020年度には、環境問題の関心への高まりなど外部環境の変化を踏まえ、CSRの視点からまとめられていたマテリアリティを、全社視点で戦略を遂行するための「経営課題」として見直した。目標達成に向けたPDCAのサイクルを適切に回し、マネジメントしていくことが重要であると考え、各マテリアリティに対し目標を定め、取り組みを推進している(図表③)。

本ファイナンスでは、同社の事業活動全体に対する包括的分析が行われた。同社のサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ「1.CO2排出量削減への貢献」、「2.CO2排出量削減」、「3.高品質な精密部品の安定供給を通じた社会への貢献」、「4.環境・人権問題に配慮した調達の推進」の4項目のインパクトが選定された。これらのインパクトは、いずれも同社のマテリアリティに係るものであり、各インパクトに対してKPIが設定された(図表④)。

図表①:「ミネベアミツミグループのCSR基本方針」及び「ミネベアミツミグループのCSR実践に向けた活動方針」

ミネベアミツミグループのCSR基本方針

ミネベアミツミグループは、社会を支える精密部品メーカーとして、「信頼性が高く、エネルギー消費の少ない製品を安定的に供給し、広く普及させる」ことを通して、地球環境および人類の持続可能な発展に貢献します。

ミネベアミツミグループのCSR実践に向けた活動方針

  • 1

    「五つの心得」と「行動規範」
    CSR活動の推進に当たっては、「五つの心得」を基本として、適切な組織統治のもと、ミネベアミツミグループ「行動規範」を遵守していきます。

  • 2

    製品を通じた社会価値の創造
    社会を支える精密部品メーカーとして、「信頼性が高く、エネルギー消費を減らす製品」を積極的に開発し、広く普及させます。

  • 3

    継続的改善と意識向上
    ミネベアミツミグループの社会的責任、取り組むべき重要課題を理解した上で達成すべき目標を掲げ、実行とレビューを繰り返して、CSR活動を継続的に改善していきます。また、こうした活動を通して、従業員一人一人のCSRについての意識向上を図っていきます。

  • 4

    ステークホルダーとの対話
    ステークホルダー(従業員、お客様、株主の皆様、地域社会、国際社会、お取引先様、環境など)との積極的な対話を通して、その期待・要請に応えるとともに、企業活動の透明性向上と説明責任を果たしていきます。

図表②:CSR体制

図表③:マテリアリティへの取り組み

図表④:ポジティブ・インパクト・ファインスで設定した目標と指標(KPI)

テーマ 内容 目標と指標(KPI) SDGs
CO2排出量削減への貢献
製品の開発・普及を通じて、世界全体のカーボンニュートラルや環境改善に貢献する
  • (a)

    製品によるCO2排出量削減貢献の拡大

    目標

    製品によるCO2排出削減貢献量約230万t-CO2(2031年3月期)

    指標(KPI)

    製品によるCO2排出削減貢献量(t-CO2

  • (b)

    グリーンプロダクツの開発・普及

    目標

    グリーンプロダクツの売上高比率90%以上(2029年3月期)

    指標(KPI)

    グリーンプロダクツの売上高比率

7 安全な水とトイレを世界中に
13 気候変動に具体的な対策を
CO2排出量削減
再生可能エネルギーの活用や省エネルギー化の推進により、CO2排出量を削減
  • (a)

    カーボンニュートラルへの挑戦(売上高原単位削減)

    目標

    自社のCO2排出量を売上高原単位で2020年3月期比10%削減(2026年3月期)

    指標(KPI)

    自社のCO2排出量(売上高原単位)

  • (b)

    カーボンニュートラルへの挑戦(総量削減)

    目標

    自社のCO2排出量を総量で2021年3月期比30%削減(2031年3月期)

    指標(KPI)

    自社のCO2排出量(総量)

13 気候変動に具体的な対策を
高品質な精密部品の安定供給を通じた社会への貢献
超精密部品の大量・安定供給体制の強化を通じ、世界のものづくりを支える
目標
  • 精度大幅アップによる超高性能ベアリングなどの量産体制構築
  • 事業拡大による、新規分野の製品にも対応可能な、製品安全管理体制の強化
指標(KPI)

量産体制構築や製品安全管理体制の強化に向けた取り組み状況

9 産業と技術革新の基盤を作ろう
環境・人権問題に配慮した調達の推進
環境・人権問題に配慮した調達の推進により、サプライチェーンにおけるCSRを実現
目標

CSR調達ガイドラインにRBA基準を導入し、それに基づく自己監査の実施(2026年3月期)

指標(KPI)

CSR調達ガイドラインへのRBA基準の導入状況

8 働きがいも経済成長も
12 つくる責任、つかう責任

上記KPIのモニタリング状況

開示資料

目標と指標(KPI) 2021年度実績 2022年度実績 2023年度実績 2024年度実績
1 CO2排出量削減への貢献
  • (a)

    製品によるCO2排出量削減貢献の拡大

    目標

    製品によるCO2排出削減貢献量約230万t-CO2(2031年3月期)

    指標(KPI)

    製品によるCO2排出削減貢献量(t-CO2

249万t-CO2

267.1万t-CO2

  • (b)

    グリーンプロダクツの開発・普及

    目標

    グリーンプロダクツの売上高比率90%以上(2029年3月期)

    指標(KPI)

    グリーンプロダクツの売上高比率

91.1%

89.6%

2 温室効果ガス排出量削減
  • (a)

    カーボンニュートラルへの挑戦(売上高原単位削減)

    目標

    自社の温室効果ガス排出量を売上高原単位で2020年3月期比10%削減(2026年3月期、Scope1+2)

    指標(KPI)

    自社の温室効果ガス排出量(売上高原単位、Scope1+2)

    2022年度より目標と指標(KPI)の対象について、CO2より温室効果ガスに表記を変更しております。

2020年3月期比0.24%増加

2020年3月期比16.8%減少

  • (b)

    カーボンニュートラルへの挑戦(総量削減)

    目標

    自社の温室効果ガス排出量を総量で2021年3月期比30%削減(2031年3月期、Scope1+2)

    指標(KPI)

    自社の温室効果ガス排出量(総量、Scope1+2)

    2022年度より目標と指標(KPI)の対象について、CO2より温室効果ガスに表記を変更しております。

2021年3月期比8.82%増加

2021年3月期比3.79%増加

3 高品質な精密部品の安定供給を通じた社会への貢献
目標
  • 精度大幅アップによる超高性能ベアリングなどの量産体制構築
  • 事業拡大による、新規分野の製品にも対応可能な、製品安全管理体制の強化
指標(KPI)

量産体制構築や製品安全管理体制の強化に向けた取り組み状況

垂直統合生産システムを展開しグローバル生産体制の拡充を進めており、お客様の要求する水準の製品の供給に貢献している。また「優秀な人材を確保する、あるいはシナジーを追求することで社会的課題の解決に不可欠な新製品を生み出し続けられる」という考えのもと、2021年には大阪研究開発センター(ORDC)を、2022年にはマザー工場である本社に軽井沢本社テクノロジーセンターを開設。欧州・中国においてもR&Dセンターを設置しグローバルな開発拠点の拡充を進め、強固なR&D体制の確立を推進。

  • 2023年に、製品開発・保有技術の集約からシナジーを生み出し、新製品開発の促進を図る目的で、新東京本部(東京クロステックガーデン)に移転。蓄積された製造ノウハウ・ベストプラクティスの共有等を通じて、さらなる生産性向上、生産能力増強に努めている。
  • 安定供給体制の強化に向けて、「リスク管理委員会」を中心に、リスク管理体制を敷いており、BCP、情報セキュリティ、安全保障貿易管理等の点で、リスクマネジメントを行い、レジリエントなサプライチェーン体制を構築している。
  • 環境負荷低減に向けて、従来の量産拠点であるタイ、上海工場での工場ゼロ排水システムの運用に加え、足元では、生産拠点であるタイとフィリピンの主要工場での太陽光発電システムの導入を皮切りに、フィリピンとヨーロッパではPPA(電力購入契約)、タイ、カンボジアにおける自社発電に取り組むなど、より一層力を入れている。
  • 品質管理体制の強化に向けて、「品質マネジメント委員会」を中心とした管理を引き続き実施中。
4 環境・人権問題に配慮した調達の推進
目標

CSR調達ガイドラインにRBA基準を導入し、それに基づく自己監査の実施(2026年3月期)

指標(KPI)

CSR調達ガイドラインへのRBA基準の導入状況

RBA基準の導入に向けて、以下のCSR調達に関する活動を実施。

  • 「CSR 調達ガイドライン」を更新し、日本語版、英語版、中国語版を取引先に通知。
  • 全資材メンバーを対象にCSR 調達に関する教育ツールの立上げ。
  • CSR 調達推進自己チェックシートをユーシンの日本国内主要取引先に配布し、全社より回答授受。
  • グループ全体で継続的に取引をおこなっている先4,617社より人権に関する誓約書受領。

RBA基準の導入に向けて、他社事例の研究に加え、CSR 調達ガイドライン改定案を策定中。

 

プレスリリース

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