Ⅰ.前文

  • フィデューシャリー・デューティーは、信託の根幹をなす基本概念であり、私どもは大正13年の創立以来、その概念を「信義誠実」「奉仕開拓」「信頼創造」として経営理念に置き、事業を行ってまいりました。
  • 三井住友トラスト・グループは、「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」という私どもの存在意義(パーパス)を共通の思いに据え、「信託の受託者精神に立脚した高い自己規律に基づく健全な経営を実践し、社会から揺るぎない信頼を確立」するという経営理念(ミッション)のもと、「信託の受託者精神に立脚し、高度な専門性と総合力を駆使して、銀行事業、資産運用・管理事業、不動産事業を融合した新しいビジネスモデルで独自の価値を創出する信託グループ」を目指す姿(ビジョン)として定め、その実現のために、「お客さま本位の徹底」をはじめとした行動規範(バリュー)を役職員が共有し、フィデューシャリー・デューティーの実践に努めてまいりました。
  • フィデューシャリー・デューティーの実践、すなわちお客さまの最善の利益を追求するためには、お客さまから信頼される高度な専門性とお客さまそれぞれのニーズに適った選択肢を提示するコンサルティングが最も重要であると考えております。
  • お客さまのニーズに対応する商品開発、販売・提供、資産運用、資産管理、資産保全などの幅広い機能を有する独自の信託グループとして、三井住友信託銀行をはじめとするグループ各社が、引き続きお客さまの「ベストパートナー」としてお客さまの最善の利益に合致した商品・サービスを提供し、グループ各社の業務全般にわたるフィデューシャリー・デューティーを実践・徹底していくために、「三井住友トラスト・グループのフィデューシャリー・デューティーに関する取組方針」を策定・公表し、更なるお客さま本位の商品・サービスの提供に向けた取り組みを進めてまいります。
  • この取組方針に基づき、グループ各社が、更なる「お客さま本位」の商品・サービスの提供に取り組み、その取組状況を定期的に公表してまいります。当社としても、各社の取組状況をモニタリングするとともに、取り組みの進捗状況などを踏まえ、取組方針を見直してまいります。

Ⅱ.グループの基本方針(行動原則)

三井住友トラスト・グループでは、信用と信託の担い手としての信頼を根本として、お客さまの安心と満足のために行動し、お客さまの最善の利益を追求します。お客さまの最善の利益に適う商品・サービスを提供するにあたり、以下の通りグループの行動原則を定めるとともに、グループの態勢を整備し、フィデューシャリー・デューティーを実践してまいります。

  • 1

    お客さま本位のコンサルティングの実践

  • 2

    わかりやすい情報提供

  • 3

    お客さまの多様なニーズに応える商品・サービスの開発・提供

  • 4

    お客さま本位の徹底と専門性の向上

  • 5

    信託グループの多様な機能を生かした金融サービスの提供

  • 6

    お客さまの安心と満足、社会・経済への貢献

Ⅲ.「三井住友トラスト・グループのフィデューシャリー・デューティーに関する取組方針」に基づく取り組みを実践する国内会社

三井住友トラスト・グループ各社は、インベストメントチェーンにおける販売や資産運用・商品開発、資産管理に、その他信託業務等を加えた機能別に取り組みを実践してまいります。

Ⅳ.態勢

(1)専門組織の設置

  • 当社に、専門組織としてFD・CS企画推進部を設置のうえ、「お客さま本位の業務運営」「お客さま満足の向上」を一体で推進し、フィデューシャリー・デューティーの浸透・徹底をグループ全体で進めていくための態勢を構築しております。

(2)ベストプラクティスとしての利益相反管理態勢の整備

  • 商品・サービスの特性を踏まえ、お客さまに信頼、安心してお取引いただけるよう、実効性のある利益相反管理態勢の構築を進めてまいります。
  • 取締役会の諮問機関として、外部メンバーを中心とした「利益相反管理委員会」を設置し、グループの利益相反管理態勢の妥当性・実効性を継続的に検証するとともに、経営会議の諮問機関として「利益相反管理高度化委員会」を設置し、利益相反管理態勢の不断の高度化に取り組んでおります。なお、「利益相反管理委員会」では、議事概要の公表や自己評価の実施等の見える化を図っております。
  • 商品提供会社と販売会社との関係などを含め、利益相反のおそれがある取引を適切に管理すべく、社内での組織や権限の分離、情報や人事異動の制限、新商品やサービス導入の際の審査の強化、主要部署への利益相反管理責任者の配置など、実効性を確保する態勢を構築しております。
  • 三井住友信託銀行では、内外の環境変化に対応し、経済主体に応じた価値創造プロセスを整備するため、「個人事業」「法人事業」「投資家事業」等の組織体制のもと、事業間等の情報・ノウハウ共有を密に各ステークホルダーの課題解決を目指していくものとしており、その業務運営においては、適切な利益相反管理を行うことが最も重要であると認識し、管理態勢を整備しております。
  • 利益相反のおそれのある取引等の具体的な管理については、三井住友トラスト・グループの利益相反管理方針(概要)を公表しております。

(3)資産運用業務における経営・運営の独立性の確保

  • 当社のみならず、資産運用事業を行うグループ各社のうち、三井住友トラスト・アセットマネジメント、日興アセットマネジメントに独立社外取締役を置くとともに、外部有識者を中心としたスチュワードシップ活動等に関する外部委員会を設置し、資産運用会社の経営・運営の独立性の確保に向けた態勢を構築しております。

(4)三井住友トラスト・グループ各社を交えた取り組みの高度化推進

  • フィデューシャリー・デューティーの中心となる資産運用、商品開発、販売、資産管理や評価業務等の事業を行うグループ各社のうち、三井住友信託銀行、三井住友トラスト・アセットマネジメント、日興アセットマネジメント、三井住友トラスト・ライフパートナーズ、M&I総研と当社により、フィデューシャリー・デューティー協議会を設け、グループ各社での意識浸透・徹底に加え、商品提供会社と販売会社の適切な相互牽制・連携、取り組みの高度化を図っております。

(5)フィデューシャリー・デューティーの徹底・浸透等に関する動機付け等

①お客さま本位の業務運営を促進・浸透させる業績評価・目標体系
  • 投資信託、保険商品などの金融商品販売に関しては、系列や手数料の多寡にかかわらず、お客さま本位に資する取り組みを評価する業績評価体系を整備し不断に改善してまいります。具体的にはお客さまへのコンサルティングや説明の充実度などを基準とした評価、お客さまの中長期資産形成を促進する取り組みの評価、お客さまへのアフターフォローの取り組みの評価など、お客さま本位の業務運営を促進する業績評価体系を整備しております。
②フィデューシャリー・デューティーの実践・浸透のための研修等の充実
  • グループ各社において、フィデューシャリー・デューティーの実践・浸透を徹底・促進するために、その理念のみならず、具体的な業務における実践内容も含めた各種研修やディスカッション等の取り組みを進めてまいります。
  • お客さま本位の意識の更なる向上を図るとともに、フィデューシャリー・デューティーの浸透度を把握するため、各種意識調査を定期的に実施し、それらの結果も踏まえ更なる施策の改善につなげるよう努めてまいります。

Ⅴ.機能別方針

機能別方針は、グループの基本方針(行動原則)を踏まえて、その内容をインベストメントチェーンにおける機能別等に具体化したものです。機能別方針に記載がない事柄についても、基本方針や機能別方針の趣旨を踏まえ、事柄の性質に応じて、対応してまいります。

1.販売

(1)お客さま本位のコンサルティングの実践

  • 三井住友信託銀行の営業店部においては、お客さま一人一人に長期にわたって寄り添うコンサルティングを実践することのできる体制を整備しています。具体的には、お客さま担当が、当社が提供するすべての商品・サービスの窓口となって、不動産や遺言等といった専門分野の担当部署と協働してお客さまへのコンサルティングを行うことで、信頼と専門性を両立したコンサルティングの提供を図っています。
  • お客さまの最善の利益に適う商品・サービスを提供するために、コンサルティングツールの積極的活用等による質の高いコンサルティングを通じ、商品・サービスのご提案時およびお取引後においても、ライフサイクルに応じ変化する資産・負債状況やそれに沿ったニーズをそれぞれのお客さまと共有させていただくよう努めてまいります。
  • 商品・サービスの提案にあたっては、コンサルティングの内容を踏まえ、また、お客さまの知識、経験、財産の状況および投資目的に照らして、ニーズに適った複数の選択肢を提示するよう努めてまいります。

(2)わかりやすい情報提供

  • 商品やサービスの複雑さや情報の重要性を踏まえ、お客さま一人一人のご理解に合わせて、わかりやすい情報提供を行います。具体的には、商品・サービスの特性、リスク、手数料、想定するお客さまの属性、提案理由、利益相反のおそれ、手数料の位置づけ等の重要な情報について、複数商品の組み合わせのような複雑な商品・サービスの場合は個別の商品ごとに類似商品・サービスとの比較や要点を絞って記載した資料を用いるなどして、適切な金融商品の選択に資するようわかりやすくメリハリをつけた説明を行います。
  • お客さまとの運用状況等の共有・振り返りに加えて、セミナーやオンラインコンテンツ等も活用し、定期的な市場動向や保有商品の運用状況の情報提供を行うとともに、重要なマーケットイベントが発生した場合には適時適切に市場動向、市場見通しについての情報提供を行い、丁寧なアフターフォローに努めてまいります。

(3)お客さまの多様なニーズに応える幅広い商品・サービスの提供・開発

  • お客さまの多様なニーズにお応えするため、お客さまのさまざまな声や意見を踏まえて、幅広い資産運用会社や保険会社等とも連携し、お客さまのニーズに合致し継続的な投資に適した「長期・分散・安定」に資する質の高い商品・サービスを、開発・提供してまいります。
  • 継続的な投資に向いた積立型商品を含む「長期・分散・安定」型投資の商品を中心に、お客さまの資産形成に資する商品を提供してまいります。また、お客さまの中長期的な資産形成に合致した手数料体系を取り入れてまいります。
  • 利益相反の適切な管理を前提に投資信託・保険商品に関し、商品提供会社のグループ内外を問わず、商品・サービスの質や販売体制等について評価する外部評価機関として設置した投信・保険ビジネス総合研究所(以下、M&I総研)を活用し、お客さまの最善の利益に合致した質の高い商品・サービスを提供する態勢を構築しております。

(4)お客さま本位の徹底と専門性の向上

  • 1

    お客さまの「ベストパートナー」を目指す企業文化・風土の定着

    • グループ各社における研修や議論等を通じて、本取組方針の浸透・徹底を図るとともに、その実践や浸透に資する取り組みを評価する業績評価・目標体系を構築していくことで、フィデューシャリー・デューティーを実践、徹底し、役職員の一人一人がお客さまの「ベストパートナー」を目指す企業文化・風土の定着を進めてまいります。
  • 2

    お客さま本位のコンサルティングなどを支える専門性の向上

    • 役職員の研修や専門資格の取得への支援などを通じて、市場環境、商品・サービスに関する知識や専門能力を高めてまいります。

(5)多様な機能を生かした金融サービスの提供

  • 信託グループとして、利益相反管理を徹底しつつ、銀行事業、資産運用・管理事業、不動産事業などの多様かつ柔軟な機能を十分に発揮して、最適かつ総合的な解決策を迅速かつ的確に提供してまいります。

(6)お客さまの声や評価のサービス等への反映

  • 窓口でのお手続き等において直接いただくお客さまの声や、アンケート等を通じていただくご意見、商品・サービスに対する評価などを踏まえ、商品・サービスの開発や改善に生かしてまいります。

(7)お客さまの安心と満足、社会・経済への貢献

  • 1

    社会や経済の変化に対応した新しい商品・サービスの提供

    • 信託の機能を活用し、経済や社会構造の変化に対応した新しい商品・サービスを生み出すことで、社会・経済に貢献してまいります。
    • ご高齢のお客さまの認知・判断能力低下の可能性も踏まえ、金融商品・サービスを長期間ご利用いただける環境づくり、継続的な資産管理等のサービスの提供を推進してまいります。
  • 2

    金融経済教育、投資教育への積極的な取り組み

    • お客さまの中長期的に安定した資産形成に資するよう、社会人に向けた金融経済教育や知識向上につながる活動に取り組んでまいります。
    • 中高生などの若年層に向けた金融リテラシーの向上に資するよう、さまざまな団体と連携した金融経済教育の提供に取り組んでまいります。

2.資産運用・商品開発

(1)資産運用の高度化

  • 明確で合理性のある投資方針を策定し、適切な資産運用態勢を維持するよう努めてまいります。
  • 日本版スチュワードシップ・コードを踏まえ投資先企業の持続的成長を促し、投資手法の洗練化と合わせて資産運用の高度化を図ることで、お客さまの利益の最大化を目指してまいります。
  • また、お客さまの利益の最大化のために、運用計画の策定・実施、運用状況・運用リスクの管理状況のモニタリング、運用の改善につなげるプロダクトガバナンス体制を整備し、不断の品質向上に努めてまいります。
  • 受託した資産について、お客さまにとって最良の取引の条件で執行するよう努めてまいります。

(2)お客さまの多様なニーズに応える商品・サービスの開発・提供

  • 三井住友トラスト・アセットマネジメントではインデックス運用に強みを持つ信託由来のグループ中核資産運用会社として、日興アセットマネジメントではグローバルで先進的なプロダクトの発掘・販売に強みを持ち、内外に多様なネットワークを有する独自性を持った運用会社として、各々の強みを生かし、運用商品の付加価値向上に努めてまいります。
  • 年金などの機関投資家等をはじめとした、お客さまからの資産運用のニーズや、資産運用サービスに対するご評価やご意見を幅広くいただき、必要に応じ外部機関の評価なども活用して、資産運用サービスの高度化や態勢の強化につなげるよう取り組んでまいります。

(3)わかりやすい情報提供

  • 市場動向やプロダクトの運用状況の定期的な情報提供や、適時適切な市場動向、市場見通しについての情報提供に加え、想定するお客さま層やリスク、手数料等の重要な情報のわかりやすい提供に努めてまいります。
  • 個人投資家や販売会社に向けて、研修プログラムや各種イベント、ウェブサイトなどを通じ、金融知識の向上に役立つ情報を提供してまいります。

(4)専門性の向上

  • 「高度な運用コンサルティング」と「高品質かつ豊富なマルチ・プロダクト」による総合的な解決策の提供を担う、資産運用業務のプロフェッショナルを、継続的かつ安定的に育成し、人材の定着と運用の継続性・再現性の確保に努めてまいります。
  • ファンドマネージャーやアナリスト等の運用人材評価にあたっては、中長期の運用成果を重視した評価・処遇を通じて、高度な専門性を有する運用体制の確保に努めてまいります。

(5)「責任ある機関投資家」としてのスチュワードシップ活動の高度化

  • グループの資産運用会社では、日本版スチュワードシップ・コードを踏まえ、「責任ある機関投資家」としての役割を適切に果たしてまいります。また、グローバルな経済の安定成長と持続的社会の実現を達成するために、ESG課題への対応を推進してまいります。
  • エンゲージメント活動に関しては、投資先企業との対話に加え、集団的エンゲージメントや国連のPRI(責任投資原則)に代表される国際的な枠組み等も有効に活用することにより、その効果を高めるよう努めてまいります。
  • グループ全体のスチュワードシップ活動を監督するスチュワードシップ部会を設置し、活動の実効性を確認しております。
  • また、三井住友信託銀行、三井住友トラスト・アセットマネジメント、日興アセットマネジメントでは、議決権行使の透明性をさらに高めるために、議決権行使結果について、個別の投資先企業、個別の議案ごとに公表しております。議決権行使ガイドラインについても随時見直しを行っております。

(6)経営の独立性を確保したガバナンスの構築・強化

  • お客さまの利益を最優先する態勢を強化するため、グループの資産運用会社では、独立社外取締役を導入するなど、グループの販売会社からの経営・運営の独立性を確保する態勢を構築してまいります。
  • グループの資産運用会社では、独立社外取締役が過半を占める監査等委員会による監査・監督を通じて、経営の透明性の確保を図っております。

3.資産管理

(1)社会インフラとしての資産管理サービスの堅確性・迅速性の確保

  • 資産管理サービスの根幹となる事務について、堅確性と迅速性を確保し、その向上を図ってまいります。
  • そのために、法制・税制等の専門性や、IT/デジタルスキルを備えた人材の育成に努めてまいります。

(2)多様化・高度化するお客さまニーズに対応する資産管理サービスの開発・高度化

  • 多様化・高度化するお客さまの資産運用のニーズにお応えするため、サービスの拡充や事務・システム等の高度化に取り組んでまいります。

(3)お客さまの投資活動の拡大やミドル・バック業務の効率化・合理化に資する情報提供・サービスの高度化

  • 信託グループとして銀行事業の知見も活用し、お客さまのミドル・バック業務の効率化、合理化に資するサービスの提供に努めてまいります。
  • 各種報告書・レポートに加え、海外グループ関係会社および各カストディアン等からの情報をベースに、付加価値の高い情報(法制・税制、市場情報)を適時提供することに努めてまいります。

4.その他信託業務等

(1)受託者責任の徹底

  • 信託の受託者として、受益者であるお客さまのために、善管注意義務、忠実義務、分別管理義務などの厳格な受託者責任を誠実に果たし、お客さまの利益を第一に信託業務を進めてまいります。

(2)すべてのお客さまへの安心、安全な金融サービスの提供

  • すべてのお客さまが安心して商品・サービスをご利用いただける金融包摂の実現に向け、デジタル技術なども活用した環境づくりに向けた取り組みを実施してまいります。
  • 人生100年時代における課題・ニーズを把握し、他事業者との連携やサービスの開発・提供に努め、ご高齢のお客さまの資産運用のニーズや資産保全・資産承継に関するニーズ、非金融サービスに関するニーズに対応してまいります。
  • お客さまの認知・判断能力等に応じたきめ細やかな情報提供や利用者保護の環境づくりなどを検討、推進していくために、認知症等を始めとする配慮が必要なお客さまへの理解度の向上に資する社員教育を行ってまいります。

(3)不動産業務におけるお客さま本位の取り組み

  • 個人のお客さまにとって最大の資産とも言える不動産の仲介業務にあたっては、信頼してお取引いただけるよう、丁寧かつわかりやすい説明に努めてまいります。
  • ITシステムを活用した情報提供やお手続きなど、お客さまにご利用いただきやすい環境づくりに取り組んでまいります。
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