赤道原則への対応
三井住友信託銀行は、プロジェクトファイナンスなどの融資にあたり、自然環境や地域社会に及ぼす影響に十分な配慮をすることを求める民間金融機関のガイドラインである「赤道原則」に2016年2月に署名しました。
赤道原則とは
赤道原則とは、民間金融機関が大規模なプロジェクトに融資を実施する際に、そのプロジェクトが自然環境や地域社会に与える影響に十分配慮されていることを確認するための基準です。具体的には、プロジェクトファイナンスと特定プロジェクト向けのコーポレートファイナンス、および将来的にこれらに借り換えられる予定のつなぎ融資が対象となっており、プロジェクトの所在国や業種を問わず適用されます。
赤道原則は、世界銀行グループの国際金融公社(IFC)が制定する環境社会配慮に関する基準・ガイドラインに基づいており、この基準・ガイドラインは、環境社会影響評価の実施プロセスや、公害防止、地域コミュニティへの配慮、自然環境への配慮など多岐にわたります。
赤道原則には2024年7月現在、世界130社(輸出信用機関を含む)が署名しています。署名金融機関は赤道原則に基づいた対策等をプロジェクト実施者に求め、特に発展途上国における大規模案件においては十分な配慮を要する場合が多く、赤道原則において求められる水準を満たさない場合は融資を行いません。
赤道原則が適用される金融商品の種類と規模等の要件
種類 | 規模等の適用要件 |
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プロジェクトファイナンス | プロジェクト総額が10百万米ドル相当以上の全ての案件 |
FA業務※1 | 同上 |
プロジェクト紐付きコーポレートローン※2 PRCL:Project-Related Corporate Laons |
以下の3つの条件をすべて満たす場合
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ブリッジローン | 貸出期間2年未満で、上述条件を満たすプロジェクトファイナンス、もしくはPRCLによってリファイナンスされるごとを意図したもの |
プロジェクト紐付きリファイナンス、プロジェクト紐付き買収ファイナンス |
以下の3つの条件をすべて満たす場合
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- ※1プロジェクトファイナンス・アドバイザリーサービス
- ※2 バイヤーズクレジット型の輸出金融は含み、サプライヤーズクレジット型の輸出金融は含みません。さらに、アセットファイナンス、ヘッジ取引、リース、信用状取引、一般資金、会社の操業維持を目的とした一般運転資金も除かれます。
三井住友信託銀行における赤道原則の運営体制
社内運営体制と赤道原則適用のプロセス
三井住友信託銀行は赤道原則の採択にあたり、赤道原則の枠組みを踏まえた環境・社会への配慮方針及び環境・社会影響の評価手順を定めた社内運営ルールを制定し、個別のプロジェクトに関する環境・社会影響の評価をプロダクト業務部(プロジェクト環境チーム)が実施しております。
環境・社会影響レビューの実施
プロダクト業務部(プロジェクト環境チーム)は赤道原則および赤道原則運用ガイドラインにもとづき、赤道原則の適用対象となる案件について、事業者によるプロジェクトの環境・社会に配慮する対応が、赤道原則が求める水準を満たしているか否かを確認する環境・社会影響レビューを実施します。環境・社会影響レビューにおいては、対象プロジェクトはスクリーニングフォームに基づき環境・社会リスクに応じて以下のA、B、Cの3つのカテゴリーに分類されます。プロダクト業務部(プロジェクト環境チーム)は、カテゴリーとプロジェクトの所在国(指定国、非指定国)や業種に応じた環境影響評価書等を元に詳細なレビューを実施します。環境・社会影響レビューの結果は審査部署へ送付され、審査部署は当該レビュー結果も踏まえたうえで、総合的なリスク判断を行います。
カテゴリー | 定義 |
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A | 環境・社会に対して重大な負の潜在的リスク、または、影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響が多様、回復不能、または前例がないプロジェクト。 |
B | 環境・社会に対して限定的な潜在的リスク、または、影響を及ぼす可能性があり、そのリスクと影響の発生件数が少なく、概してその立地に限定され、多くの場合は回復可能であり、かつ、緩和策によって容易に対処可能なプロジェクト。 |
C | 環境・社会に対しての負のリスク、または、影響が最小限、または全くないプロジェクト。 |
赤道原則遵守状況のモニタリング
環境・社会関連法規制、許認可に関する重要な項目を遵守する旨を融資契約書に反映させており、それらの重要項目の遵守状況を報告書などによって定期的に確認しています。
赤道原則適用対象プロジェクトにおける同原則の一部不遵守に関するTCFDレポートおよびサステナビリティレポートの訂正について(489KB)
2023年度に、当社が採択するサステナビリティ関連イニシアティブの遵守状況を社内で検証しました。その結果、赤道原則に関して、2020年7月に改訂された同原則第4版が適用される貸出案件について、同原則が完全には遵守されていない点があったことが判明しました。
これを受けて、追加の社内調査や外部コンサルタントによる重点調査を実施し、当社のプライマリー案件(プロジェクトの融資組成時より当社が取組している案件)について赤道原則遵守状況の確認が完了しており、今後セカンダリー案件(プロジェクトの融資組成後、取組金融機関より当社が債権譲渡を受けた案件)について調査を行う予定です。また、再発防止策として確認プロセスの明確化や相互チェック体制の構築を行いました。詳細は上記PDFをご覧ください。
社内研修体制
2016年2月の赤道原則採択に際し、赤道原則の概念及び環境・社会影響レビューの実施フローに対する理解を醸成するため、営業担当部門、評価部門、審査部門、その他関連部署を主な対象として複数回にわたり社内研修を実施いたしました。その後も、定期的な研修を実施し、社内運営の理解や環境・社会配慮の意識向上に努めています。
赤道原則適用実績
2023年度(2023年4月1日~2024年3月31日)にフィナンシャルクローズしたプロジェクトファイナンス及びプロジェクト紐付きコーポレートローンは以下の通りです(FA業務、プロジェクト紐付きリファイナンス、プロジェクト紐付き買収ファイナンスの適用実績はありません)。