価値創造プロセスとマテリアリティマネジメント
価値創造プロセス
当社は、「社会的価値創出と経済的価値創出の両立」を目的として、「価値創造プロセス」を定めています。価値創造プロセスは、ステークホルダーの価値を最大化させながら、当社自身の経営基盤(6つの資本)を持続的に強化していくプロセスと、それを経営レベルで管理する仕組みで構築されています。
社会的価値は当グループの企業活動が生み出す場合もありますが、多くはステークホルダーからその先のステークホルダーへ影響が連鎖するなかで形成されていきます。SDGsの実現に貢献し、最終的に経済(豊かさ)、社会(人)、環境(地球)に対する良い影響(ポジティブインパクトの創造とネガティブインパクトの抑制)につながる活動が、当グループにおける社会課題解決型ビジネスです。
また、当社はこうしたビジネスプロセスを経営レベルで管理する仕組みとして、マテリアリティマネジメントとリスクアペタイト・フレームワークを定めています。マテリアリティマネジメントにおいては、当社の中長期的な価値創造プロセスに影響を与える重要課題(マテリアリティ)を、社会課題解決型ビジネスから社会的価値創出につながる項目である「インパクトマテリアリティ」、価値創造の根幹に影響を与える項目である「ガバナンス・経営基盤マテリアリティ」、財務パフォーマンスに直接影響を与える項目である「財務マテリアリティ」の3つに区分し管理しています。
特に「人生100年時代」、「ESG/サステナブル経営」、「地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン(ネットワーキング)」の3つを価値創造領域と位置付け、2030年度に実現したい社会を見据え、資金・資産・資本の好循環を促していきます。

マテリアリティの定義と特定プロセス
当社では、「社会的価値創出と経済的価値創出の両立」を経営の根幹に、経済、社会の情勢変化、グループとしてのリスク認識、ステークホルダーからの要請なども考慮にいれて、中長期的な重要課題(マテリアリティ)を特定し、取締役会において定めています。
当社は、2015年度に初めてマテリアリティを特定し、以後、2019年度、2022年度に改定を実施しています。現行のマテリアリティの特定にあたっては、世界経済フォーラム国際ビジネス協議会の提言をもとに、世界4大会計事務所が中心となって取りまとめた「持続可能な価値創造のための共通指標と一貫した報告を目指して」における共通指標(以下、コモンメトリクス)を起点としました。第一段階として、コモンメトリクスの「地球」「人」「豊かさ」「ガバナンス」に分類される論点に基づいて「マテリアリティテーマ」を特定し、第二段階として、当社パーパスと経営戦略上のテーマに沿って、マテリアリティテーマを、実現を目指す社会と価値に関する項目に整理し、マテリアリティとして特定しています。
マテリアリティおよびマテリアリティテーマについては、経済や社会の情勢変化に伴って生じる論点を適切に汲み取るため、定期的にレビューを実施し、取締役会に報告しています。
コモンメトリクスを起点としたマテリアリティの特定

マテリアリティ | 概要 | |
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インパクトマテリアリティ 当社の企業活動が、経済、社会、環境に影響(ポジティブ・ネガティブ両方のインパクト)する項目。社会的価値創出と経済的価値創出の両立を具体的に狙える段階のもの |
人生100年時代 | 超高齢社会における年金や社会保障などの社会システムの変化や、健康寿命の延伸などの社会課題への備えとなり、豊かな生活を支える商品・サービスの提供。 お客さまが自身の要求するところに合う、有益で手頃な金融商品・サービスを利用できる状態をつくり出す。 |
ESG/サステナブル経営 | 気候変動、生物多様性、資源循環・サーキュラーエコノミー、大気・水質・土壌汚染、人権尊重への対応と投融資先企業およびサプライヤーにおける環境・社会・ガバナンスに配慮した経営の支援、対応手段の提供。 |
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地域エコシステム・グローバルインベストメントチェーン(ネットワーキング) | 地域における各主体が相互補完関係を構築しつつ、地域外の経済主体などとの関係構築により、多面的に連携、共創していく関係の構築。先進的な海外プレイヤーとの協業などを通じたインベストメントチェーンの強化を通じた投資機会の提供。 |
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信託×DX | 資金・資産・資本の好循環実現を促す駆動力・機能。「的確な運用と万全の管理」を備えた資産運用・資産管理を含む「信託」の力、「DX」の力(既存業務プロセスの構造変革、事業の横断融合による新たなビジネスの創造)による好循環の実現。 |
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ガバナンス・経営基盤マテリアリティ 環境や社会の課題が、当社の企業価値向上プロセスに影響する項目。直ちに財務に影響するわけではないが、長期的には影響する可能性が高い非財務項目で「守り」の要素が強い |
コーポレートガバナンス | 社会的価値創出と経済的価値創出を両立させる経営のフレームワークの確立。 |
受託者精神 | 善良な管理者の注意をもってお客さまのために忠実に行為にあたる、受託者精神の全う。お客さまの最善の利益の実現。 |
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人的資本 | 多様な価値観を有する人材の確保、登用、人材群の構築。心身ともに健康で会社のパーパスに共感しながら多様性を認め合う良好な人間関係のもと、自分の価値や強みを活かせる状況をつくり出す。 |
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リスク管理とレジリエンス | 経営の健全性確保、経営戦略に基づくリスクテイクを通じた収益確保と持続的な成長を支える、リスクの状況の的確な把握とリスクに対する必要な措置。 |
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コンプライアンスとコンダクト | 法令・市場ルール・社内規程類はもとより、広く社会規範を遵守。 役員・社員の行為が職業倫理に反する、またはステークホルダーの期待と信頼に応えていないことによる悪影響を生じない。 |
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セキュリティ | 基幹インフラ事業者に対するサイバー攻撃の防止および発生時のインシデント対応。 システムリスク管理体制の不断の見直し、改善。顧客情報のルールに則した取得と利用、厳格な管理。 |
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財務マテリアリティ 環境、社会の課題が当社の財務に影響を与える項目 |
ステークホルダーの期待する財務体質 | 健全な財務、持続的な成長。安定的な収益獲得。 |
価値創造プロセスへの反映(マテリアリティマネジメント)
当社の価値創造プロセスを実行する経営戦略、内部統制、およびリスクアペタイト・フレームワーク(RAF)などの各種管理体制において、マテリアリティが共通概念として組み込まれて、それぞれの機能の連関性が高まることで、価値創造力の一層の向上が可能となります。当社では、新たに特定したマテリアリティを踏まえた2023年度以降の中期経営計画を策定しています。今後、中期経営計画において定めた施策とKPIの状況をマテリアリティの観点でも確認した上で、経営会議の諮問機関であるサステナビリティ委員会に報告するとともに、ステークホルダーとのコミュニケーションにおいても活用することで、価値創造プロセスにおける好循環へとつなげていきます。
また、このようなマテリアリティに基づくマネジメントにステークホルダーの視点を取り込むため、後述の「インターナル・エンゲージメント」の仕組みを導入し、その状況についてサステナビリティ委員会、経営会議などにおける執行側での議論を経て、マテリアリティに関する事項として取締役会へ報告する体制としています。
当社は、社会情勢や価値観が変化し、その変化が企業価値にも影響するという「ダイナミック・マテリアリティ」という考え方をとっています。具体的にはサステナビリティ委員会において、前記の確認・報告やインターナル・エンゲージメントの結果等に基づいて、状況に応じたマテリアリティの見直しの要否について検討します。その際にリスク委員会はマテリアリティに関する事項について取締役会から諮問を受け、専門的知見からその適切性などについて審議の上、取締役会に答申を行います。
マテリアリティマネジメント

ステークホルダー・エンゲージメント

当グループのステークホルダー・エンゲージメントは、テーマに即して当グループ各社の該当部署が直接対応するもの(①)、国内外のイニシアティブに直接参画するもの(②)、サステナビリティ推進部が自身のステークホルダーとの対話やESG評価機関などからの情報収集を踏まえ当グループ各社の該当部署と行うインターナル・エンゲージメント(③)の3通りのアプローチがあり、対話チャネルを多様化させ、インプットの質と量を高めています。