当社は、気候変動を当グループの企業価値と持続可能な社会の構築との双方にとっての重要課題(マテリアリティ)として特定しており、リスクマネジメントの重要な対象としています。

サステナビリティ方針の下、気候変動対応行動指針を定め、気候変動の緩和と適応に貢献することとしていることに加え、融資における環境社会配慮に関する方針において、新設の石炭火力発電所へのファイナンスには原則的に取り組まないこととしています。

なお、大規模なプロジェクトファイナンスにおいて適用する赤道原則では、2020年度の改訂により気候変動リスクアセスメントがデュー・デリジェンス項目に追加されています。

当社は、取締役会によって決議された全社リスク管理の枠組みの中で、四半期ごとに、網羅的なリスクの洗い出しを行い、重要リスクを特定・評価(蓋然性、影響度、重要性)しています。

リスク統括役員が、洗い出された重要リスクの中から、トップリスク(1年以内に重大な影響をもたらす可能性があり経営が注意すべきリスク)、エマージングリスク(1年以内では重大な影響をもたらす蓋然性はないが、1年超、中長期に重大な影響をもたらす可能性があるリスク)を選出し、四半期ごとに取締役会にリスク管理の状況報告の中で報告することにより、既存のリスクアペタイト・フレームワーク(RAF)の中でモニタリング・管理しています。

2021年9月末基準では、「気候変動関連リスク」について、気候変動に対する社会一般の認識が最近大きく変化したことや、当グループでもカーボンネットゼロ宣言におけるコミット内容の実現やNZBA参加のため、下期より本格的な体制を構築し対応しており、エマージングリスクからトップリスクに変更しました。

2021年度は、移行リスク、物理的リスクの観点から、信用リスク管理の枠組みの高度化について、関係部署間で協議しており、気候変動関連リスクの特定・評価を行い、投融資プロセスへの取り込みや、期中モニタリングへの反映等を実施していきます。

さらに、2021年度末を目標に、気候変動関連リスクを長期的観点で既存のリスク管理の枠組みの各リスクカテゴリーで管理することを目的に、包括的なリスク管理の指針等を導入し、3線態勢の明確化や報告体制の確立等を実施していきます。

融資における気候変動リスクマネジメント

セクターポリシー

1.責任ある信託銀行グループとしての取組方針

三井住友トラスト・ホールディングスは、事業活動に起因する環境負荷を低減することを目的として「環境方針」を制定しています。また、特に重要な環境問題への対応として、「気候変動対応行動指針」「生物多様性保全行動指針」を制定し、さまざまなステークホルダーと対話・協働して対応に努めています。

2.特に留意すべき取引(気候関連のみ抽出)

①石炭火力発電

新設の石炭火力発電所へのファイナンスは原則として取り組みません。

石炭火力発電向けプロジェクトファイナンス与信残高(2021年3月末)

1,415億円

与信残高50%削減年度(2020年3月末比)

2030年度

与信残高ゼロ年度

2040年度目処

②森林

世界で急速に進む森林破壊は、生物多様性の減少や生態系の安定性の低下、水源涵養機能の低下、二酸化炭素の固定機能の低下等さまざまな問題を引き起こしています。当社は、木材の生産およびそれを原材料とする製造業に対しては、国際的な森林認証制度※1の取得状況や、先住民や地域社会とのトラブルの有無等を十分に考慮するなど、慎重な対応を行います。

※1 FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)による森林の管理・経営を対象とするFM認証(Forest Management Certification)や、認証森林林産物の加工・流通過程の管理を対象とするCoC認証(Chain of Custody Certification)等

③パーム油

パーム油は「あぶらやし」から精製され、プランテーション栽培が行われています。パーム油は、利便性や健康食品志向の高まり等により需要が急増する一方、乱開発により熱帯雨林や生物多様性減少の要因となっています。パーム油の生産およびそれを原材料とする製造業に対しては持続可能なパーム油の国際認証・現地認証※2や、先住民や地域社会とのトラブルの有無等を十分に考慮するなど、慎重な対応を行います。

※2 NDPE(森林開発ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ)や高炭素貯蔵(HCS)森林の保護を目的に掲げるRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)等

④石炭採掘

炭鉱から排出される有害廃棄物による生態系への影響、炭鉱落盤事故による死傷者の発生、人権侵害等、環境・社会に負の影響を及ぼすリスクがあります。また、気候変動に影響を及ぼす温室効果ガス排出量の増加をもたらす可能性もあることから、新規の石炭採掘(一般炭)および山頂除去採掘(MTR)方式で行う新規の炭鉱採掘事業へのファイナンスは原則として取り組みません。

⑤石油・ガス

石油・ガス採掘事業が生態系や生物多様性、住民の生活環境・自然環境等に負の影響を及ぼすリスクがあり、環境に及ぼす影響および先住民や地域社会とのトラブルの有無等を十分に考慮するなど、慎重な対応を行います。特に、オイルサンド採掘、シェールオイル・ガス事業、北極圏での採掘、パイプライン敷設への取り組みは慎重に検討します。

⑥水力発電

大規模水力発電事業が生態系や生物多様性、住民の生活環境・自然環境等に負の影響を及ぼすリスクがあり、環境に及ぼす影響および先住民や地域社会とのトラブルの有無等を十分に考慮するなど、慎重な対応を行います。特にダム建設を伴う大規模水力発電(出力25MW以上)への取り組みは慎重に検討します。

⑦大規模農園

大規模農園の開発に際しては、森林破壊や人権侵害のほか、生態系や生物多様性、住民の生活環境・自然環境等に負の影響を及ぼすリスクがあり、環境に及ぼす影響および先住民や地域社会とのトラブルの有無等を十分に考慮するなど、慎重な対応を行います。特に森林、泥炭地の開発を伴う取り組みは慎重に検討します。

3.セクターポリシーの見直し

当社は制定したセクターポリシーの適切性や案件対応状況について、経営会議(サステナビリティ推進会議)等で定期的にレビューを実施し、必要に応じてポリシーの見直しと運営の高度化を図ります。

4.教育研修

責任ある信託銀行グループの一員として、当社の役員および社員が環境負荷低減や人権方針、セクターポリシーに対する理解を深めるための教育研修を継続的に実施するとともに、役員および社員が関連する規程や手続きを遵守することを周知徹底致します。

5.ステークホルダーとのコミュニケーション

当社は制定したセクターポリシー等に係るテーマについて、さまざまなステークホルダーと継続的に対話・協働しています。これらステークホルダーとの対話・協働は、当社のセクターポリシーを社会の変遷にあわせて、より実効性の高い内容とするための見直しを検討する際に役立つものと考えます。

投資における気候変動リスクマネジメント

三井住友トラスト・アセットマネジメントおよび日興アセットマネジメントのエンゲージメント方針は以下の通りです。

三井住友トラスト・アセットマネジメントのESGエンゲージメント方針

三井住友トラスト・アセットマネジメント(以下、SMTAM)では、エンゲージメントを「企業にベストプラクティスを求める機会」と位置付けて、中長期的な企業価値向上に資する意見表明を行っています。

気候変動問題、ガバナンス改善など12の重要なESGテーマを設定し、トップダウン型の活動を行うと同時に、個別企業の事業戦略と関連付けながらボトムアップ型の活動も行っています。

活動にあたっては、ESGの専門家であるスチュワードシップ推進部の担当者と、産業企業分析のプロであるリサーチ運用部のアナリストが協働しています。

また、グローバルでは東京、ニューヨーク、ロンドンのネットワークを活用し、SMTAM独自の投資先企業へのエンゲージメントのほか、PRIやClimateAction 100+等の各種イニシアティブを通じた活動や投資先企業以外のステークホルダーへのエンゲージメントを展開しています。

日興アセットマネジメントのESGエンゲージメント方針

日興アセットマネジメント(以下、日興AM)はESGや気候変動関連などを含む重要課題について、投資先企業と積極的な対話を行うことにより、企業の持続的な価値創造を後押ししています。

また、こうした対話を通じて、経営陣の質や今後の方向性など、企業に対する理解を深め、適宜、投資の評価に反映させ、投資規模を調整しています。

エンゲージメントを通じ、投資先企業が置かれている状況の的確な把握と直面している課題の認識を共有し、中長期的な企業価値の向上を促すべく働きかけています。

その一環として、気候変動リスクや機会に関する企業の管理体制や取り組みについての対話を重視しています。

加えて、2021年3月には、「脱炭素社会に向けた取り組み」を含む「日興アセットが考える重点ESGテーマ」を、日本企業へ向けてウェブサイトで公開し、中長期的な企業価値の向上、ひいては投資収益拡大の源泉になると日興AMが考えるテーマを投資先企業に対して明示しました。

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