2019年12月

ポジティブ・インパクト評価(要約)

J.フロント リテイリング(以下、JFR)では、「先義後利(義を先にして利を後にするものは栄える)」の社是の下、顧客第一主義を重視して創業以来事業活動を継続、「持続可能な社会とあたらしい幸せの実現に向けて、人々と共に、地域と共に、環境と共に」をサステナビリティ方針の核に据え、事業活動を通じた社会課題の解決によりステークホルダーにとっての価値を創出するとともに持続可能な社会の創造に貢献することを目指している(図表①)。また、サステナビリティ活動を推進するうえでは、自社グループのみならず、取引先との対話を積極的に行い、バリューチェーン全体でのサステナビリティの向上に努めている。

2019年3月、ESGの重要課題への対応を通じたサステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するためサステナビリティ委員会を設置、5つの下記マテリアリティについて、各事業会社の実行計画策定と進捗モニタリングを行っている。また、グループ全体のコントロール機能としてJFRコーポレート部門は、各事業会社と連携をはかりながらESG実行計画のモニタリングを実施している(図表②)。

JFRでは、「当社が取り組む意義があり、成果を上げることが出来る環境社会課題」と「本業を活かして取り組むことが出来る課題」の視点から、特に重要なテーマを「マテリアリティ」として特定し、5つのマテリアリティについては、未来を起点とし、そこから逆算して今何をすべきかを考えるバックキャスティング手法に基づき、長期目標を設定し、目標達成に向けた取り組みを進めている(図表③)。

本評価では、JFRの事業活動全体に対する包括的な分析を行い、「1低炭素社会への貢献」、「2サプライチェーン全体のマネジメント」、「3地域社会との共生」、「4ダイバーシティ、ワークライフバランス」の4項目のインパクトを特定し、各インパクトについて目標及び指標(KPI)を設定した(図表④)。

図表①:理念体系及びサステナビリティ・ロードマップ(2022年6月時点)

理念体系

【ピラミッド形】第5階層(最下層):経営戦略/事業戦略,第4階層:目指す企業像と提供価値 こころ豊かなライフスタイルをプロデュースし、地域と共生する個性的な街づくりを行う,サステナビリティ方針 人々と共に、地域と共に、環境と共に,グループビジョン くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。,社是 先義後利 諸悪莫作 衆善奉行 →新たな価値創造を通じたWell-BeingLifeの提案,企業戦略・事業戦略とサステナビリティ経営を一体化,当社の強みを活かしたCSVの実践(共通価値の創造)

サステナビリティ・ロードマップ(2021年見直し実施)

2018年:サステナビリティ方針策定,マテリアリティ特定,ESG推進部設置,エコビジョン策定,ソーシャルビジョン策定,グローバルコンパクト賛同,気候変動イニシアチブ参加,女性エンパワーメント原則賛同 2019年:サステナビリティ委員会設置,JFR行動原則策定,お取引先様行動原則策定 2020年:TCFD提言に沿った開示(有価証券報告書 等),RE100加盟,Scope3温室効果ガス排出量実績第三者検証取得,再エネ100%店舗 心斎橋PARCOオープン 2030年:スコープ1・2 CO2排出量60%削減(2017年度比較),女性管理職比率50%,70歳定年制度を目指す,障がい者雇用3.0%,男性育児休職取得100%,育児・介護の離職率0%,お取引先様行動原則の浸透100%,スコープ3 CO2排出量40%削減を目指す(2017年比較) 2050年:スコープ1・2 CO2排出量0,地域と互いに連携しながら、当社が得意とする街づくりのノウハウと地域活性化を両立させ、持続可能な街づくりを実現します。

図表②:サステナビリティ推進体制(2022年6月時点)

図表③:マテリアリティ

マテリアリティ(2019年12月PIF取組時点)

マテリアリティ(2022年6月時点)(2021年見直し実施)

2021年に見直しを実施し、「サーキュラー・エコノミーの推進」「お客様の健康・安全・安心なくらしの実現」を追加。

図表④:ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した目標と指標(KPI)(2019年12月PIF取組時点)

テーマ 内容 KPI SDGs
低炭素社会への貢献 「Science Based Targets(SBT)」の認定を受けた温室効果ガス排出量の削減に向けたグループ全体での取組み
  • 2030年Scope1・2温室効果ガス排出量40%削減(2017年対比)
  • 2050年Scope1・2温室効果ガス排出量ゼロ(2017年対比)
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
13 気候変動に具体的な対策を
サプライチェーン全体のマネジメント 「お取引先様行動原則」の浸透、温室効果ガス排出量削減に向けたサプライチェーン全体での取組み
  • 2030年までにお取引先様行動原則100%浸透
  • 2030年Scope3排出量40%削減を目指す(2017年度比)
7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
13 気候変動に具体的な対策を
地域社会との共生 「アーバンドミナント戦略」を通じた地域社会の活性化、街づくりの推進

地域、行政、小売が相互に連携しながら、当社が得意とする街の資産を活かした街づくりと環境課題の解決を両立させ、持続的かつ先進的な街づくりを実現する。

具体的な指標については、今後の戦略の具体化に合わせて検討する。

11 住み続けられるまちづくりを
17 パートナーシップで目標を達成しよう

ダイバーシティの推進

ワーク・ライフ・バランスの実現

女性、シニア、障がい者などの多様性を尊重し、受容する労働環境の実現

各々のライフステージに応じた労働環境の実現

  • 2025年までに女性管理職比率30%を達成、2030年までに50%を目指す
  • 2030年までに70歳定年を目指す
  • 2030年までに障がい者雇用率3.0%を達成
  • 2030年までに男性の育児休職(最長2週間)取得100%を達成
  • 2025年までに育児・介護による離職率ゼロを達成
3 すべての人に健康と福祉を
5 ジェンダー平等を実現しよう
8 働きがいも 経済成長も

上記KPIのモニタリング状況

開示資料

目標と指標(KPI) 2019年度実績 2020年度実績 2021年度実績 2022年度実績
1
  • 2023年 Scope1・2 温室効果ガス排出量40%削減(2017年度比)
  • 2030年 Scope1・2 温室効果ガス排出量60%削減(2017年度比)
  • 2050年 Scope1・2 温室効果ガス排出量ゼロ

2021年に2023年KPIを追加し、2030年は40%削減より60%削減に見直しております。

162,508t-CO2

(2017年度比マイナス16.3%)

132,106t-CO2

(2017年度比マイナス32.0%)

2
  • 2023年までに「お取引先様行動原則」のアセスメント質問票の回収率80%・浸透率25%
  • 2030年までに「お取引先様行動原則」のアセスメント質問票の回収率95%・浸透率100%
  • 2023年におけるScope3 排出量10%削減(2017年度比)
  • 2030年におけるScope3 排出量について2017年度比40%削減を目指す

2021年に2023年KPI及び2030年「アセスメント質問票の回収率95%」を追加しております。

  • 「お取引様行動原則」9,444社送付
  • 3,783千t-CO2
    (2017年度比+707千t-CO2

大丸心斎橋店、澁谷パルコ設備投資が要因

  • 「お取引様行動原則」アセスメント実施準備(2021年秋実施予定)
  • 2,470千t-CO2
    (2017年度比マイナス15.6%)
3
地域開発
  • 文化や歴史をはじめとする地域の特徴をいかした街の魅力向上、街の賑わい創出に資する開発
  • 店舗のCSV化(サステナビリティ化)の横展開
地域コミュニケーション
  • 地域行政、教育機関、NGO・NPOとの連携による地域活性化の推進
  • 地産地消などローカリティコンテンツの発掘・発信による地域活性化の推進(全店舗で地域連携を推進)

2021年に「地域、行政、小売が相互に連携しながら、当社が得意とする街の資産を活かした街づくりと環境課題の解決を両立させ、持続的かつ先進的な街づくりを実現する。具体的な指標については、今後の戦略の具体化に合わせて検討する。」より上記目標に見直しております。

  • アーバンドミナント戦略重点5地区での取組実績開示(ESGモデル店舗大丸心斎橋店オープン等)
  • 心斎橋PARCO、BINO栄オープン
    (百貨店とパルコSC業態とのシナジーを最大限に活用した商業施設等を構築し、新たな消費・顧客を創出)
  • 大丸松坂屋百貨店「Think LOCAL」による地産地消の拡大
    (全国各地の名産品のオンライン販売と店舗のある地域のNPOなどへ寄付出来るデジタルチャリティを実施)
  • パルコクラウドファンディング「BOOSTER」を通じた地域活性化
  • 2021年2月、パルコは昭和女子大学と実践的なプロジェクト型学修と地域活性化を目的として産学連携協定を締結
4
  • 2023年までに女性管理職比率26%、2025年までに30%を達成、2030年までに50%を目指す(※1)
  • 2030年までに70歳定年を目指す
  • 2023年までに障がい者雇用率2.6%、2030年までに3.0%を達成(※2)
  • 2023年までに男性の育児休職(最長2週間)取得100%、2030年までに性別を問わず100%を達成(※3)
  • 2023年までに育児・介護による離職率1.0%未満、2030年までに育児・介護による離職率ゼロを達成(※4)

2021年に下記目標より上記目標に見直しております。

  • ※12025年までに女性管理職比率30%を達成、2030年までに50%を目指す
  • ※22030年までに障がい者雇用率3.0%を達成
  • ※32030年までに男性の育児休職(最長2週間)取得100%を達成
  • ※42025年までに育児・介護による離職率ゼロを達成
  • 女性管理職比率:連結16.6%
  • 70歳定年:65歳まで延長実施
  • 障がい者雇用率:2.21%
  • 男性育児休暇取得:連結18名取得
  • 社員離職率(退職理由が定年・転籍・役員就任を除く):連結3.9%
  • 女性管理職比率:連結19.9%
  • 70歳定年:65歳まで延長実施(2020年3月)
  • 障がい者雇用率:2.21%(2020年6月時点、関係会社の特例範囲)
  • 男性育児休暇取得:連結18.8%
  • 育児・介護による離職率:連結1.1%

プレスリリース

本事例の内容は、2022年6月末日現在の情報に基づき記載しております。

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