2022年12月

ポジティブ・インパクト評価(要約)

オリックス不動産投資法人(以下、OJR)の概要

OJRは、2001年9月に設立され、オフィスビルを中心に商業施設、住宅、物流施設、ホテル等様々な用途の不動産に投資を行う日本で最初の総合型REITである(2002年6月に東京証券取引所不動産投資信託証券市場に新規上場)。2022年10月19日現在で6,907億円(取得価額ベース)・111物件の資産規模を有しており、下記運用理念に基づき、広範な事業専門性と全国ネットワークを活用し、様々な不動産開発運営ビジネスを展開するオリックスグループとのシナジー強化、OJRならではの柔軟な成長戦略により、投資主価値の安定的成長を推進している。

オリックス・アセットマネジメント株式会社(以下、OAM)は、OJRの資産運用のためにオリックス株式会社の全額出資により2000年9月に設立された。オリックスグループがこれまでに金融業界及び不動産業界で蓄積したノウハウを受け継ぎ、実務経験豊富なスタッフを擁している。

また、オリックスグループとのシナジーを活用した強固なパイプラインから強みを活かせる物件に厳選投資を行っている。

OJRのESG投資戦略

OAMは、OJRの資産運用に際し、OJRの運用理念である投資主価値の安定的成長には、ESG課題を考慮したサステナブルな資産運用が重要であると考え、これを実践するために「ESG方針」を制定している(図表①)。当該ESG方針に基づき策定した「エネルギー・温室効果ガス削減指針」「資源・廃棄物管理指針」「ESG調達等指針」「ESG投資・運用指針」において数値目標、具体的な取組、組織体制等を定めている。なお、「ESG投資・運用指針」は、ESG方針に基づいた活動及びESG課題を考慮したサステナブルな資産運用を確実にするため、2021年9月に制定された指針であり、UNEP FIの「責任不動産投資:PRI原則の10項目」を尊重することを表明している(図表②)。「ESG方針」にてESG課題に対する取組意思を表明し、また各指針において、具体的な投資・運用の意思決定プロセスにおけるESG視点を組み込み、経済的リターンと社会、環境、経済へのポジティブなインパクトの両立を目指した資産運用を推進している。今後、保有資産に対する長期的な視点でのESG課題への分析・評価がより一層高度化されることが期待できる。

OJRのマテリアリティと組織体制

OAMは、投資主価値の安定的成長を目指すという運用理念に基づき、2019年2月にESGの視点を取り入れたサステナビリティ上のマテリアリティを特定した(図表③)。それぞれのマテリアリティについて目標を設定し、目標達成に向けたPDCAを回し達成することで、SDGsで示されている世界共通の社会課題解決とOJRの中長期的成長の実現を図っている。OAMは、上記マテリアリティと各目標の達成を含むESG方針を組織的に推進するため、社長を委員長とする全取締役を含む各部管掌役員をメンバーとする「サステナビリティ委員会」を制定し、重要事項の審議、報告を年4回以上開催している(図表④)。

本PI評価で特定したインパクト

本PI評価では、OJRの保有不動産全体について、サプライチェーン及びインベストメントチェーンに対する包括的分析が行われた。この結果、「気候変動対策の推進」、「廃棄物・水資源管理」、「お客様(テナント・利用者)の健康・安全・快適性向上」、「ステークホルダー・サプライチェーンとの協働」の4項目の個別インパクトが特定された。そして、各インパクトに対してKPIが設定された(図表⑤)。

図表①:ESG方針

私たちオリックス・アセットマネジメント株式会社は、本投資法人の資産運用に際し、本投資法人の運用理念である投資主価値の安定的成長には、ESG課題(環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance))を考慮したサステナブルな資産運用が重要と考え、これを実践するために「ESG方針」を制定します。

<基本姿勢>
  • 私たちは、投資主価値の安定的成長を目指すという運用理念に基づき、ESGの観点からリスクと機会を認識し、サステナビリティ上の重要課題(マテリアリティ)を特定し目標を設定して対応推進することで、本投資法人の中長期的成長と、SDGs等の社会課題への対応を進めます。
  • 活動にあたっては、私たちが属するオリックスグループのサステナビリティポリシーを実践し、また、別紙に記載する国際規範・イニシアティブを支持・尊重して対応します(オリックスグループが支持する国際規範等を含む)。
1.人権の尊重と労働慣行への対応
  • オリックスグループの人権ポリシー及び国際的な規範にのっとり、人権を尊重し、人種、国籍、性別、障がい、宗教、年齢などを理由とするあらゆる差別、非人道的扱いを容認せず、機会均等の保証に努めます。これらには結社の自由、団体交渉権、強制労働や不当な低賃金労働、長時間労働の排除および児童労働の廃止が含まれますがこれらに限りません。
  • 生産的なディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を得る機会の促進に努め、自由、公平、安全および人間の尊厳が存在する労働環境(慣行)に配慮します。
2.気候変動への対応
  • 気候変動が、世界共通の重要な課題であり中長期のリスクであることを認識し、脱炭素社会にむけて、温室効果ガスの排出削減等による緩和と、影響を軽減化し機会とするための適応に取り組みます。
  • パリ協定とパリ協定に基づく日本の掲げる削減目標を認識し、長期的目標として活動をすすめます。
3.環境への配慮(生態系・生物多様性、廃棄物・水等資源への対応等)
  • 私たちの事業活動が環境へ及ぼす影響(例えば自然生息地や生態系、資源利用、汚染物質・廃棄物の排出など)をリスク及び持続可能性の観点から把握・評価し、環境法令の遵守と予防的アプローチにより環境負荷の低減に努めます。
  • 水を含む資源の有効利用と、廃棄物の削減・リサイクル、有害物質、排水等の適正管理による汚染防止により、循環型社会に寄与します。
  • 生物多様性および生態系への影響に配慮し、環境保護に努めます。
4.ステークホルダーとの協働
  • 投資主、テナント・取引先、地域社会、役職員等の様々なステークホルダーと事業活動を通した対話を行い、信頼性・透明性を高めるとともに、ステークホルダーからのフィードバックを事業活動に生かしていきます。
  • 地域社会への参画とコミュニケーションを通じて、その発展に貢献します。
  • プロパティ・マネジメント会社(PM)及びビル・マネジメント会社(BM)などの取引先に対して、本方針の実践を奨励し、サプライチェーン全体での対応推進に努めます。
5.お客さま(テナント・利用者)の健康と快適性の増進
  • 健康・安全・快適性の向上を目指した資産運用に努め、お客さまの満足度向上とコミュニティの健康衛生水準の向上に貢献し、同時に保有物件の価値向上を図ります。
6.役職員への対応
  • ダイバーシティやワークライフバランス等、働きやすい職場環境に留意し、役職員の健康と快適性の増進を目指します。
  • 役職員の能力開発に努め、多様で優秀な人材の確保と、提供する業務の質・効率性向上を図ります。
  • ESGに関する教育・啓発活動を継続的に実施し、役職員の意識と知識の向上に努めます。
7.リスク管理とコンプライアンス、公正な事業慣行への対応
  • 適用法令・社会規範・規則を遵守し、高い倫理観をもって行動し、公正に事業活動を行います。
  • 適切なリスク管理とコンプライアンスの遵守徹底のため、社内体制を整備するとともに、特に利益相反取引に注視し、利益相反のおそれのある当事者間での取引等に係る弊害の排除に取り組みます。
  • 贈収賄やマネーロンダリング、不正取引などの汚職を防止し、反社会的勢力との取引を一切行いません。
8.ESG情報開示と可視化の推進
  • 投資主、テナント・取引先、地域社会、役職員等の様々なステークホルダーや関係者に対して、ESGに関する積極的な開示に努めます。その一環として、保有物件の環境認証や不動産投資法人に対するESG評価などへも適切に取り組み、ESGパフォーマンスの可視化を目指します。

図表②:ESG投資・運用指針

ESG投資・運用指針

私たちは、本投資法人の資産運用に際し、中長期的な観点から、運用資産の着実な成長と安定した収益の確保を目指すためには、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)に関するサステナビリティの視点が重要であることを認識し、投資・運用の意思決定プロセスの中にESGの要素を組み込みます。

  • (1)
    ESGに関する視点を、意思決定・運用プロセスに組み込み、全社で対応します。
  • (2)
    ESG方針、その他関連する指針を遵守し、UNEP FIの「責任不動産投資:RPI原則の10項目」を尊重します。
  • (3)
    サステナビリティの観点から、経済的側面に加えて気候変動や環境面の課題、人権や健康・安全・快適性などの社会面の課題についても、リスク評価を行います。
  • (4)
    投資・運用にあたっては、環境、社会へ及ぼす影響と責任を認識し、充分に考慮した上で、判断します。
  • (5)
    運用にあたっては、プロパティ・マネジメント会社やビル・マネジメント会社などの取引先とも協働し、環境面・社会面に配慮して取り組みます。
  • (6)
    サステナビリティ委員会は、本方針の運用状況について、定期的に評価を行い、必要に応じて改善、見直しを行います。

図表③:マテリアリティ

図表④:ESG推進体制

図表⑤:ポジティブ・インパクト・ファインスで設定した目標と指標(KPI)

テーマ 内容 目標と指標(KPI) SDGs
気候変動対策の推進
  • 保有物件において、エネルギー効率の向上や省エネルギーに資する設備機器等の導入及び再生可能エネルギーの導入を図ることで温室効果ガスを削減
  • グリーンビルディング認証を取得し、客観性とパフォーマンスの可視化を図る
  • a)

    CO2排出量削減

    目標
    • 2050年カーボンニュートラル
    • 2030年CO2排出量原単位を2018年比35%削減
    指標(KPI)

    CO2排出量原単位(t-CO2/㎡)

  • b)

    エネルギー消費量の削減

    目標

    過去5年間のエネルギー消費原単位を年平均1%以上削減

    指標(KPI)

    エネルギー消費原単位(kl/㎡)

  • c)

    再生可能エネルギーの使用拡大

    目標

    再生可能エネルギーの導入量の把握・開示を引き続き行いつつ、目標策定の検討

    指標(KPI)
    • 再生可能エネルギー導入量
    • 再生可能エネルギー導入量の目標策定に向けた検討状況
  • d)

    グリーンビルディング認証取得推進

    目標

    2030年にグリーンビルディング認証の取得割合を床面積ベースで70%以上

    指標(KPI)

    グリーンビルディング認証の取得割合

7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
13 気候変動に具体的な対策を
廃棄物・水資源管理
  • 資源の効率的な利用をすすめ、廃棄物の削減
  • リサイクルを推進
  • 廃棄物処理時には法令遵守し適正に処理する
  • 水資源の有効利用
  • a)

    廃棄物削減

    目標

    2030年の埋立処分率を1%以内

    指標(KPI)

    埋立処分率

  • b)

    水使用量削減

    目標

    水使用量を前年比以下とする

    指標(KPI)

    水使用量

6 住み続けられるまちづくりを
12 つくる責任 つかう責任
お客さま(テナント・利用者)の健康・安全・快適性向上
  • 保有物件において、環境・省エネ対策や、健康・安全・快適性向上等を目指した資産運用を行うことで、お客さまの満足度向上と、保有物件の競争力強化を図る
  • グリーンビルディング認証を取得し、客観性とパフォーマンスの可視化を図る
  • 保有物件の運営を通じて、そのレジリエンス(ソフト面・ハード面)を高め、お客さま満足度につなげる
目標

お客さま(テナント・利用者)の健康・安全・快適性、及び満足度の向上

指標(KPI)

お客さま(テナント・利用者)の健康・安全・快適性、及び満足度向上に資する取組の実施状況

3 すべての人に健康と福祉を
9 産業と技術革新の基盤をつくろう
11 住み続けられるまちづくりを
ステークホルダー・サプライチェーンとの協働 ステークホルダー・サプライチェーンとの協働を通じたESG推進
目標

ESG配慮条項を含むPM契約の締結推進

指標(KPI)

ESG配慮条項を含むPM契約の締結状況

6 安全な水とトイレを世界中に
12 つくる責任 つかう責任
13 気候変動に具体的な対策を

上記KPIのモニタリング状況

目標と指標(KPI) 2022年度実績 2023年度実績 2024年度実績
1 気候変動対策の推進
  • a)

    CO2排出量削減

    目標

    2050年カーボンニュートラル
    2030年CO2排出量原単位を2018年比35%削減

    指標(KPI)

    CO2排出量原単位(t-CO2/㎡)

0.06748(t-CO2/㎡)

  • b)

    エネルギー消費量の削減

    目標

    過去5年間のエネルギー消費原単位を年平均1%以上削減

    指標(KPI)

    エネルギー消費原単位(kl/㎡)

0.04121(kl/㎡)

過去5年間の年平均値の算出は2023年度から開始予定。

  • c)

    再生可能エネルギーの使用拡大

    目標

    再生可能エネルギーの導入量の把握・開示を引き続き行いつつ、目標策定の検討

    指標(KPI)
    • 再生可能エネルギー導入量
    • 再生可能エネルギー導入量の目標策定に向けた検討状況
  • 導入量:14,055,574(kwh)
  • 検討状況:2023年9月に「2030年電力使用量の50%を再生可能エネルギー由来とする(スコープ2、スコープ3の管理権原を有する部分)」を目標として新設。
  • d)

    グリーンビルディング認証取得推進

    目標

    2030年にグリーンビルディング認証の取得割合を床面積ベースで70%以上

    指標(KPI)

    グリーンビルディング認証の取得割合

84%

2 廃棄物・水資源管理
  • a)

    廃棄物削減

    目標

    2030年の埋立処分率を1%以内

    指標(KPI)

    埋立処分率

0.90%

  • b)

    水使用量削減

    目標

    水使用量を前年比以下とする

    指標(KPI)

    水使用量

251千㎡

3 お客様(テナント・利用者)の健康・安全・快適性向上
目標

お客さま(テナント・利用者)の健康・安全・快適性、及び満足度の向上

指標(KPI)

お客さま(テナント・利用者)の健康・安全・快適性、及び満足度向上に資する取組の実施状況

  • テナント満足度:92%
  • 2022年度より、実施対象をオフィス・商業・住宅・ホテルに拡大(従前の実施対象はオフィス)。
4 ステークホルダー・サプライチェーンとの協働
目標

ESG配慮条項を含むPM契約の締結推進

指標(KPI)

ESG配慮条項を含むPM契約の締結状況

98.2%の物件に関しESG配慮条項を含むPM契約を締結。

プレスリリース

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