2022年12月

ポジティブ・インパクト評価(要約)

川崎重工は、航空宇宙システム、エネルギーソリューション&マリン、精密機械・ロボット、車両、モーターサイクル&エンジン事業を展開する総合重機大手である。同社は、2020年に「グループビジョン2030」(図表①)を策定し、「安全安心リモート社会」、「近未来モビリティ」、「エネルギー・環境ソリューション」を3つの注力するフィールドとしている。また2017年には、CO2FREE(CO2排出ゼロ)、Waste FREE(廃棄物ゼロ)、Harm FREE(有害化学物質ゼロ)の3つのFREEを柱とする「Kawasaki地球環境ビジョン2050」を策定しており、その実現に向けて3か年の「環境経営活動基本計画」を策定・実行している。そして、2021年に見直した「重要課題(マテリアリティ)」(図表②)では、「グループビジョン2030」における3つの注力するフィールドを「事業を通じて創出する社会価値」として、また、脱炭素社会の実現、気候変動への対応、人財活躍推進などを「事業活動を支える基盤」項目の重要課題として特定している。同社は、サステナビリティに係る各種施策の審議・決定、達成状況・遵守状況のモニタリングを行うため、「サステナビリティ委員会」を定期的に開催し、各種取り組みを推進している(図表③)。

本PI評価では、同社の事業活動全体に対する包括的分析が行われた。同社のサステナビリティ活動も踏まえ、インパクト領域につき特定のうえ、「リモートによる新しい価値の創造」、「人・モノの移動を変革」、「安定したクリーンエネルギーへの挑戦」、「Waste FREE & Harm FREE」の4項目のインパクトが選定された(図表④)。そして、各インパクトに対してKPIが設定された。

図表①:グループビジョン2030

図表②:マテリアリティ

図表③:サステナビリティ推進体制

図表④:ポジティブ・インパクト・ファインスで設定した目標と指標(KPI)

テーマ 主な内容 主なKPI(指標と目標) SDGs
リモートによる新しい価値の創造 すべての人々が豊かで安全かつ安心して暮らせる社会を、リモート技術で創る
  • (a)

    生産性向上・労働力不足の解消

    目標

    2030年までに国内約400万人の製造業・サービス業等の働き手不足の5%解消

    指標(KPI)

    リモートプラットフォームのアクティブユーザー数

  • (b)

    手術支援ロボットによる高度医療の提供

    目標

    2030年までに国内約200万人の医療・福祉関係者の不足の5%解消

    指標(KPI)

    手術支援ロボットによる手術件数

3 すべての人に健康と福祉を
8 働きがいも 経済成長も
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
17 パートナーシップで目標を達成しよう
人・モノの移動を変革 人やモノが安全で素早く効率良く移動できる社会を、新モビリティで創る
目標

2030年までに物流における人手不足の20%解消

指標(KPI)
  • 無人VTOL機のユーザー数、総輸送量
  • 配送ロボットのユーザー数、総輸送量
3 すべての人に健康と福祉を
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
11 住み続けられるまちづくりを
安定したクリーンエネルギーへの挑戦
  • 水素社会の早期実現
  • CO2排出削減による気候変動への対応
  • (a)

    水素サプライチェーンの構築

    目標

    2030年までにKHIソリューションによる水素導入量22.5万t/年

    指標(KPI)

    KHIソリューションによる水素導入量

  • (b)

    水素利用の拡大

    目標

    2030年までにKHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減量160万t

    指標(KPI)

    KHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減量

  • (c)

    事業活動におけるCO2排出量削減

    目標
    • 2030年:カーボンニュートラル(国内グループ会社、Scope1,2)
    • 2040年:CO2排出量80%削減Scope3カテゴリー1、2021年比)
    • 2050年:カーボンニュ―トラル(グループ全体(連結)、Scope1~3)
    指標(KPI)
    • CO2排出量(Scope1,2、グループ全体(連結)・国内グループ会社)
    • CO2排出量(Scope3カテゴリー1)
7 エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
9 産業と技術革新の基盤を作ろう
13 気候変動に具体的な対策を
17 パートナーシップで目標を達成しよう
Waste FREE & Ham FREE
  • 循環型社会の実現
  • 自然共生社会の実現
  • (a)

    廃棄物総排出量の削減

    目標

    直接埋め立て廃棄物÷廃棄物総発生量を1%以下

    指標(KPI)

    直接埋め立て廃棄物÷廃棄物総発生量

  • (b)

    適正な化学物質管理と使用量削減

    目標

    有害化学物質の削減

    指標(KPI)

    有害化学物質総発生量

12 つくる責任 つかう責任

上記KPIのモニタリング状況

テーマ 目標と指標(KPI) 2022年度実績 2023年度実績 2024年度実績
1 リモートによる新しい価値の創造
  • (a)

    生産性向上・労働力不足の解消

目標

2030年までに国内約400万人の製造業・サービス業等の働き手不足の5%解消

  • 本テーマについては、取り組みを開始した段階であり、以下に代表される施策を通じて目標達成に貢献する方針。
  • 2023年5月からリモートロボットシステム開発のスモールスタートを可能にするサービス「Remolink Builder」の提供を開始。
  • 2023年7月からはロボットを介した新たなリモートワークを実現するクラウドサービス「Remolink」の提供を開始し、100%人作業か100%自動化かだけではなく“リモート”による人とロボットの役割分担という新たな選択肢を提案している。
   
KPI

リモートプラットフォームのアクティブユーザー数

  • (b)

    手術支援ロボットによる高度医療の提供

目標

2030年までに国内約200万人の医療・福祉関係者の不足の5%解消

  • 手術ロボットの導入実績:累計33施設、症例数:累計1,158症例
   
KPI

手術支援ロボットによる手術件数

2 人・モノの移動を変革
  • (a)

    物流における労働力不足を解消

目標

2030年までに物流における人手不足の20%解消

  • VTOL無人機「K-RACER」を、ヘリコプタの技術とモーターサイクルで培った小型ハイパワーエンジンを組み合わせ開発している。社会実装へ向けた取り組みとして、長野県伊那市から「無人VTOL機による物資輸送プラットフォーム構築事業」の委託を受けており、実現に向けて取り組み中。
  • 医療従事者の負担軽減を目指す取り組みとして、藤田医科大学およびSEQSENSE株式会社と共同で、屋内配送ロボット「FORRO」(フォーロ)を活用した配送サービスのトライアルを2023年7月10日に開始。
   
KPI
  • 無人VTOL機のユーザー数、総輸送量
  • 配送ロボットのユーザー数、総輸送量
3 安定したクリーンエネルギーへの挑戦
  • (a)

    水素サプライチェーンの構築

目標

2030年までにKHIソリューションによる水素導入量22.5万t/年

  • 水素導入量、水素エネルギーによるCO2削減量の把握に向けて各種施策に取り組み中。
  • 液化水素サプライチェーン構築に向けた3つのステップを着実に進めており、①2022年春、世界初の液化水素国際間輸送を実現し、パイロット実証を完遂②足元、商用規模の機器開発により2030年度までの商用化実証③その後、商用チェーンを運用開始する計画。
  • 中長期的には最もコストが安価となる液化水素の証明として、同社が建造した世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」による日豪間の海上輸送・荷役実証を2022年春に完遂。
   
KPI

KHIソリューションによる水素導入量

  • (b)

    水素利用の拡大

目標

2030年までにKHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減量160万t

(a)水素サプライチェーンの構築に同じ。

   
KPI

KHIソリューションの水素エネルギーによるCO2削減量

  • (c)

    事業活動におけるCO2排出量削減

目標
  • 2030年:カーボンニュートラル(国内グループ会社、Scope1,2)
  • 2040年:CO2排出量80%削減(Scope3カテゴリー1、2021年比)
  • 2050年:カーボンニュ―トラル(グループ全体(連結)、Scope1~3)
  • CO2排出量(Scope1,2、グループ全体(連結)・国内グループ会社):38.3万t(前年比▲4.8%)
  • CO2排出量(Scope3カテゴリー1):279.1万t-CO2(2021年比+16.6%)
  • CO2排出量(グループ全体(連結)、Scope1~3):3,264.3万t(前年比+30.2%)
   
KPI
  • CO2排出量(Scope1,2、グループ全体(連結)・国内グループ会社)
  • CO2排出量(Scope3カテゴリー1)
4 Waste Free & Harm Free
  • (a)

    廃棄物総排出量の削減

目標

直接埋め立て廃棄物÷廃棄物総発生量を1%以下

0.1%

   
KPI

直接埋め立て廃棄物÷廃棄物総発生量

  • (b)

    適正な化学物質管理と使用量削減

目標

有害化学物質の削減

429t(前年実績比▲33.2%)

   
KPI

有害化学物質総発生量

プレスリリース

本事例の内容は、2022年12月20日現在の情報に基づき記載しております。

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