Ⅰ.前文

  • 「信託(Trust)」とは、「信じて託す」という言葉どおり、信頼できる人(受託者)に大切な財産を託し、目的に沿って大切な人や自分(受益者)のために運用・管理してもらう制度です。
  • その根幹には、フィデューシャリー・デューティー、すなわち受託者が受益者のために最善を尽くすという、信託の基本概念があります。
  • 三井住友トラストグループは、「信託の力で、新たな価値を創造し、お客さまや社会の豊かな未来を花開かせる」という存在意義(パーパス)を共通の思いに据え、経営理念を実現するため「お客さま本位の徹底」をはじめとした行動規範を遵守いたします。
  • 私たちは、お客さまの最善の利益を追求するため、高度な専門性を発揮し、お客さまそれぞれのニーズに適ったコンサルティングを実践するなど、フィデューシャリー・デューティーの実践・徹底を通じて、「ベストパートナー」になることをお約束します。
  • そのために、お客さまのニーズに幅広く対応できる銀行事業、資産運用・管理事業、不動産事業など信託グループの強みを活かし、アドバイザリー※1・資産運用・資産管理の三位一体のビジネスモデルで独自の付加価値を創造してまいります。
  • (※1)販売におけるコンサルティングなどの業務

Ⅱ.グループの基本方針(行動原則)

三井住友トラストグループは、役職員一人ひとりがお客さまの「ベストパートナー」となるために、以下をグループの行動原則と定め、これを遵守してまいります。

  • 1

    お客さま本位のコンサルティングの実践

  • 2

    わかりやすい情報提供

  • 3

    お客さまの多様なニーズに応える商品・サービスの開発・提供

  • 4

    お客さま本位の徹底と専門性の向上

  • 5

    信託グループの多様な機能を生かした金融サービスの提供

  • 6

    お客さまの安心と満足、社会・経済への貢献

グループの基本方針(行動原則)を実践し、お客さまの最善の利益を図る業務運営が企業文化として定着するよう、以下の取り組みを実施してまいります。

Ⅲ.態勢

(1)専門組織の設置、ベストプラクティスとしての利益相反管理態勢の整備

  • 三井住友トラストグループに設置したFD・CS企画推進部を中心に、「FD(フィデューシャリー・デューティー):お客さま本位の業務運営」と「CS(カスタマー・サティスファクション):お客さま満足の向上」を一体で推進してまいります。
  • これらの推進状況については、取締役会の諮問機関として、外部メンバーを中心とした利益相反管理委員会を設置し、グループの利益相反管理態勢の妥当性・実効性やフィデューシャリー・デューティーの推進状況を継続的に検証し、その状況の「見える化」を図ってまいります。
  • 三井住友トラストグループは、利益相反のおそれがある取引を適切に管理すべく、組織や権限の分離、情報や人事異動の制限、新商品やサービス導入の際の審査の強化、主要部署への利益相反管理責任者の配置など、実効性を確保する態勢を構築します。
  • また、グループ横断的に、フィデューシャリー・デューティー協議会を設置し、グループ各社における意識浸透・徹底に加え、商品提供会社と販売会社の適切な相互牽制・連携、取り組みの高度化を図ってまいります。

(2)商品・サービスの組成・販売におけるプロダクトガバナンス※2の確保

  • お客さまの最善の利益に適った商品・サービス提供を確保するために、商品・サービスの組成におけるプロダクトガバナンス態勢や適切な販売管理態勢の高度化に取り組んでまいります。
  • グループの資産運用会社においては、商品の組成にあたり、想定するお客さま層の特定や期待リターンに見合った適切なコスト水準を検討します。また、組成後においても、想定した運用が行われ、コストに見合うリターンが提供できているか、商品性に合致した運用が継続可能か、想定するお客さま層に沿った販売がなされているか、などの観点で検証します。
  • グループの販売会社においては、顧客の資産・収入状況、取引経験、知識、取引目的・ニーズ及び判断能力などの属性に応じて、お客さまにふさわしい商品を販売・提供すること、お客さまが投資判断の際に必要となるリスク・リターン・コストについて、類似する商品・サービスと比較しながら説明、提案することなど、お客さまの最善の利益を追求する観点から、商品・サービスの販売・管理態勢の高度化に取り組み、検証してまいります。
  • (※2)組成・提供する商品・サービス(プロダクト)が、お客さまの最善の利益に適うものであるかを確認・検証する枠組み

(3)資産運用業務における経営・運営の独立性の確保

  • 資産運用業務を担うグループ各社のうち、三井住友トラスト・アセットマネジメントと日興アセットマネジメントは、独立社外取締役を導入し、グループの販売会社からの経営の独立性を確保する態勢を構築します。また、三井住友トラストグループでは、利益相反管理委員会に、外部有識者を中心としたスチュワードシップ活動に関する部会を設置し、運営の独立性の確保に向けた態勢を構築します。

(4)販売業務における利益相反管理態勢の確保

  • 三井住友信託銀行は、個人・法人・投資家・不動産・マーケット事業間の情報・ノウハウ共有を密に各ステークホルダーの課題解決を目指すにあたり、適切な利益相反管理が最も重要であると認識し、管理態勢を整備・高度化してまいります。
  • 利益相反のおそれのある取引などの具体的な管理については、三井住友トラストグループの利益相反管理方針(概要)を公表しております。

(5)フィデューシャリー・デューティーの徹底・浸透に関する動機付け等

①お客さま本位の業務運営を促進・浸透させる業績評価・目標体系
  • 三井住友信託銀行は、お客さま本位の業務運営を評価する業績評価体系を整備し、不断に改善してまいります。
  • 特に個人事業においては、お客さまへのコンサルティングや説明の充実度、中長期のサポート、販売後のフォローアップなど、お客さま本位の業務運営を促進する業績評価体系を構築します。また、営業店部の評価については、残高純増目標などの「定量目標の成果」と前述の「お客さま本位の業務運営の評価」を掛け算し、お客さま本位の取り組みが、営業店部の評価により一層反映される業績評価体系を構築します。
②フィデューシャリー・デューティーの浸透・実践、お客さま満足度向上のための研修などの充実
  • グループ各社において、本部による各種階層別の研修(店部長から新入社員まで)や全役職員対象のeラーニング研修を通じて、お客さま本位の理念と具体的活動事例を習得します。
  • また、三井住友信託銀行では、販売の現場におけるコンサルティング提案などの実務に則した研修や、営業店部毎に実施する「FD:お客さま本位の業務運営」や「CS:お客さま満足の向上」をテーマとしたボトムアップのディスカッションなどの取り組みを進めてまいります。
  • これらの取り組みを通じたFD・CSの浸透度を把握するために、お客さまアンケートや社員意識調査を定期的に実施し、それらの結果も踏まえ、更なる改善につなげてまいります。

Ⅳ.機能別方針

Ⅱ.グループの基本方針(行動原則)を踏まえて、その内容をインベストメントチェーンにおける機能別に具体化したものです。記載がない事柄についても、グループの基本方針(行動原則)や機能別方針の趣旨を踏まえて、対応してまいります。

1.販売等

(1)お客さま本位のコンサルティングの実践

  • 資産形成のお手伝いや不動産の資産活用、遺言・相続を含む資産管理のご相談など、お客さまに長期にわたって寄り添うコンサルティングを実践します。そのために、営業店部のお客さま担当が、提供するすべての商品・サービスの窓口となって、不動産や遺言・相続といった専門分野の担当部署と協働し、信頼と専門性を両立した幅広いコンサルティング(トータルコンサルティング)を提供します。
  • コンサルティングツールを活用した質の高いコンサルティングを通じ、商品・サービスの提案時およびお取引後においても、ライフサイクルに応じ変化する資産・負債状況やそれに沿ったニーズをお客さまと共有します。
  • 商品・サービスの提案にあたっては、お客さまの知識、経験、財産の状況および投資目的などに照らして、ニーズに適った複数の選択肢を提示します。

(2)わかりやすい情報提供

  • 情報の重要性や商品・サービスの複雑さを踏まえ、お客さまのご理解に合わせて、わかりやすい情報提供を行います。具体的には、お客さまに適切に金融商品・サービスを選んでいただけるよう、商品・サービスの特性、リスク、手数料、想定するお客さまの属性、提案理由、利益相反のおそれ、手数料の位置づけなどの重要な情報について、わかりやすくメリハリをつけた説明を行います。特に、複数の商品を組み合わせるなどした複雑な商品・サービスの場合は、個別の商品ごとに類似する商品・サービスとの比較説明を行います。
  • 販売後も定期的なフォローアップを行い、お客さまの運用状況などの共有に加えて、セミナーやオンラインコンテンツも活用し、市場動向・市場見通しなどの情報提供を行います。
  • 不動産の仲介業務においては、信頼してお取引をいただけるよう、丁寧かつわかりやすい説明を行います。
  • スマホアプリなどデジタル技術も活用した情報提供やお手続きなど、お客さまにご利用いただきやすい環境づくりに取り組みます。

(3)お客さまの多様なニーズに応える幅広い商品・サービスの提供・開発

  • 銀行事業、資産運用・管理事業、不動産事業など信託グループとしての幅広い強みを活かし、多様なニーズに応える商品・サービスを開発・提供します。
  • お客さまの声や意見を踏まえ、資産運用会社や保険会社とも連携し、お客さまのライフサイクルに応じて「長期・分散・安定」※3に適う商品・サービスを開発・提供します。
  • なお、投資信託の取り扱い・選定にあたっては、外部評価機関も活用し、グループ内外を問わず、幅広い資産運用会社よりお客さまの最善の利益に適う商品・サービスを提供します。
  • (※3)資産形成世代だけでなく、退職前後世代、シニア世代も含めた資産運用を促進するために「長期・分散・つみたて」ではなく「長期・分散・安定」を目指します。

(4)お客さま本位の徹底と専門性の向上

  • 1

    お客さまの「ベストパートナー」を目指す企業文化・風土の定着

    • グループ各社における研修やディスカッションを通じて、本取組方針の浸透・徹底を図るとともに、その実践や浸透に関する取り組みを評価する業績評価・目標体系を構築します。これらを通じて、フィデューシャリー・デューティーを実践、徹底し、お客さまの「ベストパートナー」を目指す企業文化・風土の定着を進めます。
  • 2

    お客さま本位のコンサルティングなどを支える専門性の向上

    • 各種研修の実施や専門資格の取得支援を通じて、商品・サービスや販売ルールに関する知識や専門能力の向上を図ります。

(5)多様な機能を生かした金融サービスの提供

  • 信託グループの強みであるアドバイザリー・資産運用・資産管理の三位一体のビジネスモデルを推進すべく、その前提である利益相反管理を徹底しつつ、銀行事業、資産運用・管理事業、不動産事業などの多様な機能を十分に発揮して、最適かつ総合的な解決策を提供します。

(6)お客さまの安心と満足、社会・経済への貢献

  • 1

    社会や経済の変化に対応した新しい商品・サービスの提供

    • 信託の機能を活用し、経済や社会構造の変化に対応した商品・サービスを生み出すことで、社会・経済に新たな価値を創造します。その際、すべてのお客さまが安心して商品・サービスをご利用いただける金融包摂の実現に向け、遠方に暮らすご家族とオンラインでご相談いただける環境づくりなどにも取り組みます。
    • 高齢のお客さまの資産運用や資産保全・資産承継に関するニーズ、非金融サービスに関するニーズなど、人生100年時代における課題を把握し、他事業者との連携なども通じて、対応してまいります。
    • お客さまの認知・判断能力低下の可能性も踏まえ、きめ細かく情報提供するとともに、資産管理などの金融商品・サービスを長期間ご利用いただける環境づくりを推進します。また、配慮が必要なお客さまへの理解度の向上など、社員教育を行います。
  • 2

    お客さまの声や評価の商品・サービスへの反映

    • 窓口でのお手続きにおいて直接いただくお客さまの声や、アンケートを通じたご意見、商品・サービスに対する評価などを活用し、商品・サービスの開発や改善を図ります。
  • 3

    金融経済教育、投資教育への積極的な取り組み

    • 中長期的の資産形成を促進するために、社会人に向けた金融経済、資産運用に関する知識向上に取り組みます。
    • 中学生や高校生の金融リテラシー向上のために、さまざまな団体と連携した金融経済教育の提供に取り組みます。

2.資産運用・商品開発

(1)資産運用の高度化

  • 明確で合理性のある投資方針を策定し、適切な資産運用態勢を整備します。
  • 日本版スチュワードシップ・コードを踏まえたエンゲージメント活動への取り組みや、ESGへの取り組みなどにより、お客さまの利益の最大化を目指します。
  • お客さまの利益の最大化のために、想定するお客さま層の特定やリスク・コスト・リターンの分析・検証、販売会社における販売状況のモニタリングなど、プロダクトガバナンス態勢を整備、高度化します。
  • 受託資産の運用にあたっては、最良の条件で取引を執行します。

(2)お客さまの多様なニーズに応える商品・サービスの開発・提供

  • 運用会社としての強みを活かし、多様化する資産運用ニーズや高齢化などの社会環境の変化を捉えた付加価値の高い運用商品を開発・提供します。
  • お客さまの声や必要に応じて外部機関評価なども活用して、資産運用サービスの高度化や態勢の強化に取り組みます。

(3)わかりやすい情報提供

  • 想定するお客さま層を特定・開示し、適切に商品提供が行われるよう販売会社への情報提供を行います。
  • 投資判断に役立つ、商品性やリスク特性、手数料などの重要な情報について、わかりやすい情報提供を行います。
  • 運用状況の定期的なご報告や、適時適切な市場動向、市場見通しの発信など、わかりやすい情報提供を行います。
  • 資産運用や金融商品の理解を深めていただくために、ウェブサイトにレポートやコラムなどの情報コンテンツを拡充します。

(4)専門性の向上

  • 資産運用業務のプロフェッショナルを、継続的かつ安定的に育成し、人材の定着と運用の継続性・再現性の確保に努めます。
  • ファンドマネージャーやアナリストなどの運用人材評価にあたっては、中長期の運用成果を重視した評価・処遇を通じて、高度な専門性を有する運用態勢を確保します。

(5)「責任ある機関投資家」としてのスチュワードシップ活動の高度化

  • 日本版スチュワードシップ・コードを踏まえ、「責任ある機関投資家」としての役割を適切に果たします。また、グローバルな経済の安定成長と持続的社会の実現を達成するために、ESG課題への対応を推進します。
  • 投資先企業との対話に加えて、集団的エンゲージメントや国連のPRI(責任投資原則)に代表される国際的な枠組みなども有効に活用することにより、効果的なエンゲージメント活動を推進します。
  • グループ全体のスチュワードシップ活動を監督するスチュワードシップ部会を設置し、活動の高度化や実効性の確認を行います。
  • 議決権行使の一層の透明性を確保すべく、議決権行使結果について、個別の投資先企業、個別の議案ごとに公表します。議決権行使ガイドラインについては不断の見直し、改善を図ります。

(6)経営の独立性を確保したガバナンスの構築・強化

  • 独立社外取締役を導入するなど、持株会社ならびに系列販売会社からの経営の独立性を確保する態勢を整備します。

3.資産管理

(1)資産管理サービスの堅確性・迅速性の確保

  • 資産管理サービスの根幹となる事務について、堅確性と迅速性を確保し、その向上を図ります。
  • そのために必要な法制・税制などについて、高度な専門性を有する人材の育成に努めます。

(2)お客さまのニーズへの対応、社会的インフラとしての事務・システムの高度化

  • グローバルに多様化・高度化するお客さまの資産運用のニーズにお応えするため、事務・システムの高度化に取り組みます。

(3)お客さまの投資活動の拡大やミドル・バック業務の効率化・合理化に資する情報提供・サービスの高度化

  • 信託グループとして銀行事業の知見も活用し、お客さまのミドル・バック業務の効率化、高度化に向けたサービスを提供します。
  • 各種報告書・レポートに加え、海外グループ関係会社および各カストディアンからの情報などをベースに、付加価値の高い情報を適時提供します。
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