認知症等判断能力の低下への対応
人生80年時代から100年時代へ移行することにより、認知症や要介護となる期間が、人生の中の一部分にあることを前提に準備することが必要な時代に、私たちは生きることになりました。三井住友信託銀行は、ノーマライゼーションの視点に立ち、認知症のお客さまであってもこれまでと変わらぬ生活を送ることができるような社会を目指し、さまざまな取り組みを行っています。
年齢別認知症出現率
営業店における対応能力・リテラシーの向上
三井住友信託銀行では、国の認知症高齢者にやさしい地域づくり政策「新オレンジプラン」に基づき、認知症の人と家族の応援者である「認知症サポーター」養成を推進し、個人事業の営業店の指導者層である課長に対し日本応用老年学会の「ジェロントロジー・コンシェルジュ」認定資格の取得を義務づけています。
また、個人事業の全営業店に「認知症の人にやさしい金融ガイド」を配備の上読み合わせ勉強会を実施するなど、より実務的な対応力を強化しています。あわせて、対応スキルの修得を示す資格として、2021年1月に創設される「銀行ジェロントロジスト」認定資格を、個人事業の営業店の全社員が取得する予定です。
認知症サポーター | 3,973人 |
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ジェロントロジー・コンシェルジュ認定試験 | 924人 (2014年から個人事業の全店部長が受験、2020年から課長以上に拡大) |
銀行ジェロントロジスト認定試験 | 2021年1月の資格適用時より全営業店で受験予定 |
※人数は2020年9月末時点の実績
意思決定支援に向けたCOLTEMとの連携
認知症に関する取り組みとして三井住友信託銀行は、文科省傘下の科学技術振興機構が助成するCOLTEM(高齢者の地域生活を健康時から認知症に至るまで途切れなく法学、工学、医学を統合した社会技術開発拠点)およびその研究リーダーの京都府立医科大学大学院(成本迅医学研究科精神機能病態学教授)と連携を取りながら推進しています。2017年9月に出版した「認知症の人にやさしい金融ガイド」もその成果の一つです。また、金融と認知症に焦点を当てたシンポジウムの開催を主導するなど、金融業界全体の認知症対応力の向上に貢献してきました。本連携を通じて培った知見は、三井住友信託銀行自身の商品・サービスの開発等にも大きく役立っています。
また、同社は、金融機関高齢顧客対応ワーキンググループの開催や参画など、金融業界全体の認知症対応力の向上にも注力してきました。COLTEMの後継組織として設立された一般社団法人日本意思決定支援推進機構にも参画し、2021年1月にスタートの「銀行ジェロントロジスト」認定試験の創設にも貢献しています。
認知症のお客さまの財産管理
認知症などの理由で判断能力が不十分になると、預貯金の管理やさまざまな契約を自分で行うことが難しくなり、振り込め詐欺や悪徳商法の被害に遭う恐れが高まります。財産管理において、まず優先すべきは言うまでもなく「守り」です。次に必要なことは財産管理における「日常生活支援」です。生きていくために年金を受け取ったり、税金や公共料金の払い込みや、買物の代金の支払いなど日常生活のお金の管理をサポートすることが必要です。また「想いをつなぐ」ためのサポートも重要です。認知症になって意思(想い)の伝達が難しくなっても、やりたいこと、やってほしいことに変わりはありません。ただ、それを支援者の配慮に頼るには限界があり、特に契約など法律行為が伴うことは、判断能力があるうちに私的な契約で「想いをつなぐ」ための手立てを講じておくことが必要です。当社では、シニア世代応援レポート「認知症問題を考える」を作成し、成年後見制度やその他の公的な支援の仕組み、およびそれらを補完する金融商品・サービスを分かりやすく整理し、ご提案しています。
地域連携ネットワークにおける金融機関の役割
現在、政府・地方自治体等が一体となり、成年後見制度の利用促進等に向けた地域連携ネットワークの構築とその中核となる機関(中核機関)・協議会の整備が進められています。当グループは、金融・財産管理インフラを担う社会の一員として、全国の支店において近隣の中核機関等とのコンタクトを取ることで連携のベースを築くなど、地域との連携※を積極的に図っていくとともに、信託の力を生かしたソリューションで貢献できるよう、一層取り組みを強化していきます。
※2018年2月、東京都との間で「都と事業者との連携による高齢者等を支える地域づくり協定」を締結しました。
- 地域連携ネットワークの役割
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- 権利擁護支援の必要な人の発見・支援
- 早期の段階からの相談・対応体制の整備
- 意思決定支援・身上保護を重視した成年後見制度の運用に資する支援体制の構築
- 地域連携ネットワークの機能
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- 広報機能、相談機能、利用促進機能、後見人支援機能、不正防止効果
- ※1協議会:法律・福祉の専門職団体や、司法、福祉、医療、地域、金融等の関係機関が連携体制を強化するための合議体。
- ※2チーム:ご本人に身近な親族、福祉・医療・地域等の関係者と後見人が一緒になって日常的にご本人の見守りや意思や状況等を継続的に把握。